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先生、ちょっと難しいですw:読書録「アメリカ音楽史」

・アメリカ音楽史 ミンストレル・ショウ、ブルースからヒップホップまで
著者:大和田俊之
出版:講談社選書メチエ(Kindle版)

「星野源のおんがくこうろん」に「トシ解説員」として第1回・第2回に出演していた大和田俊之さんによる「アメリカ音楽史」。
どうしても「音楽史」となると、欧州を中心とした「西洋音楽史」になりがちですが、本書は意図的にそこを切り離して「アメリカ音楽史」を語っています。
その分、視野としては「商業音楽」(ポップス、エンタメ)的な側面が強く出てきますが、その割には結構難しかったかなぁ。
まあ、僕の知識が追いつかないってだけの話なんですけどw。


<本書が提示する〈歴史〉は必ずしもタイトルが連想させるほど客観的なものではない。それは明確な主題に沿って記述されることになるだろう。結論を先に述べるならば、本書はアメリカのポピュラー音楽史を〈擬装〉というテーマで読み解くものである。「自己表現としての音楽」──「歌」や「音楽」について思いを寄せるとき、私たちはごく自然にこのことを当然視しがちである。だが、本書はこうした素朴な実感に反して、アメリカのポピュラー音楽を駆動してきたのは「他人になりすます」欲望であることを論証する。自分を偽り、相手に成り代わり、別人としてふるまい、仮面をかぶる。こうした〈擬装〉願望が創造力の中心に備わっており、その欲望を原動力としてアメリカのポピュラー音楽は発展してきたのだ。>


「アメリカ音楽」となると、どうしても黒人音楽/白人音楽という分類が頭に浮かんでくるし、商業的にもそういう側面があることは否めないとは思うんですが、本書ではそこに<擬装>という視点を取り入れることで、そういった分類/分断を超えた相互影響の側面と、それによる音楽としての変化を「歴史」として語っています。


<白人が黒人になりすまし、アフリカ系がアジア系のペルソナを用い、ユダヤ人は黒人のふりをしながら白人の地位を獲得する。それだけでなく男性は女性に異装し、中産階級の人間が労働者を装い、あげくのはてに宇宙人が地球上に現れる。アメリカのポピュラー音楽はこうした滑稽ともいえる〈擬装〉志向を中心に駆動してきたのであり、それはときに人種差別など政治的正しさの基準に明らかに抵触しながらも、アメリカ合衆国の華やかで下世話で活気のある音楽文化を育んできた。〈擬装する〉アメリカ音楽──他者になりすます欲望のサウンドは今後もその音色を世界に響きわたらせるだろう。>

なかなか面白いし、僕自身の偏ったアメリカ音楽経験(50年代・60年代のジャズ、ソウル/R&B、ロックは若干w)からも、感覚的に納得できるところがありました。
ま、「感覚的」であって、知識的にかっちりとフォローできるまでの読解力はなかったですがw。



個人的には現在のアメリカ音楽の主流になっている(と思える)「ヒップホップ」に関して、もう少し知りたいところだったんですが、「とっかかり」はあったものの、思ったほど突っ込んでもらえなかった印象。
もっとも本書の出版は「2011年」ですからね。
ヒップホップが今ほどの勢いになったのは、それ以降かもしれません。
そうも思って、一応、作者の最新作(アメリカ音楽の新しい地図)も購入はしています。
…してるんだけど、ちょっとこのまま突っ込んでいくのは憚れるというか…。
そこまで「勉強」モードにはなりきれないもので。



まあ、オイオイ、そういう気分になったら読んでみましょうかね。
それまでは「積読」ということで…w。




#読書感想文
#アメリカ音楽史
#大和田俊之

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