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同じ森のコースを歩くということ

ポケモンスナップとカメラ


「ポケモンスナップ」というゲームがある。主人公は「ポケモン」の世界のカメラマンで、高山や洞窟や渓谷など様々な自然の中でポケモンを撮影するのだ。

そのゲームの中で、主人公は定速で走るカートのようなものに乗って写真撮影をすることになる。そのカートはどこでも自由に走り回れるわけではなく、電車のようにあらかじめ敷かれたレールの上を決まった速度で走ることしかできない。なので好きなポケモンがいるからといってその場で停止したり、あるいはもっと脇道に行きたいから好きに移動するというようなことは一切できない。主人公は空港の動く歩道のように、決められたコースを決められたスピードで運ばれていく。

最近流行りのオープンワールドとは対極の位置付けになっていて、しかしその制約があるからこそこのゲームの面白さはあるのだと今では思う。

小学生だった僕はそのゲームに夢中になって何度も同じコースにチャレンジした。チャレンジするごとに新たな発見があり、また見逃したポケモンがいたりして、「これが終わったらもう一回このコースを回ろう」と思ったりしていたのだった。


森に入るということ

写真集の付録では述べたけれど、最近は森に入るのにハマっている。そもそも森ってどこからを森と呼ぶのだろう。日本語は林よりも森の方が木という漢字が多いため、中規模だと林で、より大規模になると森なのだと思いがちだが、どうやらそうではないらしい。


結論から言うと森の定義について調べてみると、そこに明確な決まりはないようだった。林業の世界では人の手が介在して管理された樹木帯が林で、人の手が入っていない場合は森と呼ぶらしいが、個人的には釈然としない。

人の手が一切入らない森林地帯が日本のどこにあるというのだろう。そもそも人の手が介在しているかどうかは書類などを見なければわからず、わからないまま僕たちは森とか林といった言葉を好き勝手使っている。森にはもっと懐の深いニュアンスがあると思っている。


ちなみに手元の広辞苑(第七版)を開くと"もり【森・杜】樹木が茂り立つ所"とあり、"はやし【林】樹木の群がり生えた所"とあるため、少なくとも広辞苑はこの二つを明確に区分していないようだった。


近所の「森」は市と有志ボランティアが保全している樹木地帯で、虫や鳥や自然を手入れしつつ、できるだけビオトープに近い状態にするために活動しているらしい。その森は人が歩くコースが(ポケモンスナップのように)あらかじめ決められていて、柵で区切られたコースを歩くと森の中を回遊しながら一周できるようになっている。そのコースは複数回分岐していて、その日の気分によって好きなコースを選択することができるのが嬉しいのだ。



「ちょっと森に散歩に行ってくるね」といって家を出て森へ向かう。目的は森を見て楽しむことと、写真を撮ることだ。カメラはNikon Z30に標準ズームレンズをつけて。


この時期は蚊やブヨがいるため虫除けスプレーは欠かせないが、それでも平気で刺されたり喰われたりする。思えばポケモンのゲームでも虫よけスプレーの効力は100歩までだった。刺されたり喰われたりするので森の中ではなるべく立ち止まらない。一定の速度で歩いて、気になる風景があれば立ち止まって素早くカメラを構えて撮影する。

このゲーム性が気に入っていて、決まった時間内で好きにいった写真がどのくらい撮れるのかを自分と競っているようで楽しいし、全く同じコースだとしても森に入る季節や時間によって撮れる写真は違ってくる。だから何度森に入っても飽きることはないのだ。





植物の写真ができました。限定40部です。
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