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ああ、眠れない。
「黄金の方舟に乗れぬ夜の淵明日を思いてため息をつく」
(OUGON NO HAKOBUNE NI NORENU YORU NO HUCHI ASU WO OMOITE TAMEIKI WO TSUKU)
甘く愛しい夜の眠りが、今夜はやってこない。
春宵一刻値千金。
宵闇のなか白く淡く浮かび上がるように花が咲き乱れる
美しい春の夜、暖かくて風も心地よい春の夜。
眠りという至福の時間は、春の夜みたいに黄金の価値を
持っている。
目を閉じて金色の安らぎに包まれるのを待つけれど、
意識はしっかり手元にある。
ああ、眠れない。
早く頭と体を休めないと、明日が来てしまうのに。
眠りの河をゆく方舟は、通り過ぎて彼方へと行って
しまった。
追いかけることも捕まえることもできずに、夜の浅瀬で
一人佇み朝を待つ。
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