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明転 板付きで、食卓で食事をしている男と女 女 おいしい? 男 …おいしいよ 女 ほんと? 男 (頷き) 女 よかった。この鮭おいしいでしょ。脂のってて。北海道のいいやつなのよ。とってもいい色してたから、買っちゃった。 男 ふーん 女 あと、りゅうちゃん寝てる時ね、お荷物届いたよ。アマゾン。何買ったの? 男 洗剤とか、食料。 女 もー日用品くらい、外に出て買いに行きなさいよ。だらしないなぁ。 男 まとめて買ったほ
明転。舞台には机と椅子2脚。 カトウが現れる。いかにもストーリーテラーといった感じ。 カトウ とある青年の話。彼の青春は、普通といえば普通。だが、ある種、味気ないものだった。というのも、一番多感な時期にしかるべき経験をして来なかった。彼は童貞を捨て損ねていた。そもそもの起こりは高校時代だろう。同級生女子の「月々の事情」をイジリ倒してしまった結果、女子からの「異性としての対象価値」を失った。それからずるずると、彼は機を逃し続けてしまった。当時青かった己の過ちをそれ
【場所】 とあるアパートのゴミ捨て場。 【人物】 ヒトトセ(女) 二〇一号室に住んでいる。 カマツカ(男) 二〇二号室に住んでいる。 イトウ(女) 二〇三号室に住んでいる。 【隣人の収穫】 夜。 明転。街灯の明かりがぽっかり浮かぶ。 そこはアパートの共同ゴミ捨て場である。 女が一人いる。 女 ……。 女、どこかそわそわしている。 誰かが来るのを待っているような、そんな様子。 女 ……! 何かに気付き、一度はける。 少しすると、男がゴミ袋を持って入ってく
登場人物 渡蟹(わたりがに) たかお(26)……長男。フリーター。コンビニでバイトしている。 渡蟹 たかひろ(24)……次男。会社員。 まりも(23) ……たかひろの彼女。たかひろとは飲み屋で知り合った。 霧見(きりみ)(27) ……コンビニ店員。たかおのバイト先の同僚。バンドマン。 ■コンビニ・夜 まだ日をまたぐ前の夜のコンビニ。 たかおと霧見がレジカウンターにいる。 (SE)ファミマのメロディ。(来店時に鳴るアレ) 二人 いらっしゃいま
彼女 「たまに、いやたまにじゃないかもしれない。よく、とてもよく、私は色々なことが待てなくなります。たとえば小さい頃、母と約束していた門限は五時でしたが、時計の針が四時をさすと帰りたくて帰りたくてたまらなくなりました。かくれんぼをしている最中、私が鬼だというのに、我慢できずに帰ってしまったこともありました。学校に上がってからはひどいものでした。四時間目まである日は三時間目に、六時間目まである日は五時間目に、帰りたくて帰りたくてたまらなくなりました。いつもいつも、私は最後まで待
■夜のベランダ 明転。舞台中央に男と女がいる。 握手をするような形で手を握り合っている。 女が男の手をひねる。男、痛がる。 男の手の中から、女性モノの下着(パンツの方)がはらりと落ちる。 しばし目のやりとり。 女 (これはなに?)……。 男 (いや……) 男、逃げようとする。 女、格闘技を心得ている系のやり方で男を止める。 男 いたたたた! すいません! 女 いや、だから。 男 すいません! 本当に! 女 すいませんじゃないですけど。