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春の日に、花束を持って会いに行く。
山形の春はすこし遅れてやってくる。わたしの住む土地では、ふきのとうが顔を出して、梅が咲いたらだいたい4月。それから桜が咲くまで2週間ほど。
冬の間、厚く空を覆っていた雲は薄くなり、気づけば青空が見える。やっと地上に光が届いたと思ったら、草木が目にも止まらぬ速さで成長していく。
世界が色彩を取り戻し、陽の気に包まれている!
まるで全ての命を祝福しているかのように眩しい。
それなのに、私ときたら
季節のなかで、一番やさしいのは秋だと思う
秋の真ん中に立っている。陽の光は心地よくて、果物に芋栗南京、秋刀魚など、食べ物がほっこりおいしい。春夏秋冬のなかで一番やさしいのは秋かなと思う。
東北地方に越してからよりいっそう感じるようになった。ここに暮らす人たち皆、厳しい季節へ向かうから、「今だけは少しやさしくしよう」てな世界の計らいだろうか。
そんな季節に撮った日常写真をまとめておこう。こうして見返せるようにしておけば、厳しい冬にもやさ
笹川流れの遊覧船で、おもしろ岩とかもめに出会う。
9月に入り残暑はまだまだ厳しいものの、朝晩の風にどこか切なげな香りを含むようになった。大きくどっかりとしていた雲は、ぼんやりと薄く延びはじめ、確実に秋が近くまで来ている。
私は焦っていた。夏のうちに、どうしてもやりたいことがあるんだ。夏風邪や車の故障のせいで先延ばしになっていたそれは、笹川流れの海で遊覧船に乗ること。
笹川流れは新潟県村上市にある海岸で、その11kmつづく線上には変わった形の大
現像したフィルム写真に、地元横浜への愛が詰まっていた。
その街のことをよく知っているからこそ、撮れる写真というものがあると思う。わたしはそういう写真がとても好きだ。普段から、人でも場所でも着飾ったよそいきの表情ではなく、いつもの飾らない姿を見たいと思う方で、物事がもつ素朴な一面を愛している。
春の近づくとある日、わたしは横浜で時間を持て余していた。仕事ついでに帰省したものの、実家の鍵を持っていなかったため母親の仕事が終わるまでひとり時間をつぶすことに