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『しあわせの牛乳』から学ぶ、人間のしあわせとは・・

「なかほら牧場」岩手県岩泉町にある、日本でも珍しい「山地酪農」を実践している牧場です。一年を通し、牛が山で放牧されています。『しあわせの牛乳』は、牧場主、中洞さんの牛飼いとしての思い。中洞牧場ができるまで。それから、未来の酪農感を考えさせてくれた一冊です。著者は佐藤慧さん、写真は安田菜津紀さんのものが使われています。酪農家は勿論、料理人など、食に関わる人に是非読んでもらいたい本です。

”しあわせ”のヒント

「しあわせの牛乳」という言葉を受けて、皆さんはどのように受け取りましたか?

飲んだら幸せな気持ちになれるおいしい牛乳?-それは勿論です。なかほら牧場の中洞さんが一生懸命牛さんと作る美味しい牛乳です。

でも、それだけではありません。しあわせのヒントは、牛、人、環境そのものがしあわせでなくてはならない。ということにあります。

多くの日本の牧場では牛は牛舎で飼われ、エサは穀物を与えられています。牛は草食動物です。草を消化できる胃のつくりにしかなっていないのです。そのため、5,6年で体を壊し、ミルクも取れなくなり、食肉ようとして出荷されてしまうようです。牛舎の傍が臭いというのは、牛たちが体にあわないえさを食べ、消化不全を起こしているからでしょう。

生産量を重視した牛乳の採り方は、牛の命としあわせを引き換えにわたしたちに届いているのです。

「山地酪農」

冒頭でも出た単語ですが、この酪農方法をご存知でしょうか。

「山地酪農」は、その名の通り。山の急斜面に牛を放し飼いすることです。

この酪農は、牛の世話をほとんどする必要がないのです。牛は好きなように山を歩き、自由に草を食べ、好きな時に用を足す。そして糞尿はやがて土に帰り、栄養となって植物を育てます。

そして人間はお乳を頂く。自然・牛・人間が共生環境にある酪農なのです。

山地酪農を考え、中洞さんに酪農法を説いた植物学者の猶原さんは、次のように言ったといいます。

「-人間の生きる意味を探求するような酪農をやりなさい。-たとえ自分が死んだあとでも、千年先に豊かな自然を残せるような、そんな酪農を目指しなさい」

この言葉の意味を捉えて酪農をできる人間が世の中にいるのでしょうか。

世の中は大規模な近代的酪農が拡大化する流れにあります。楢原さんの意思とは真逆の方向に進む時代。酪農家がいなくなる。などということもいわれるほどです。

人が求めれば求めるほど、自然の摂理から外れていく。そして人の生き辛い未来を人が作っていくのです。

”しあわせ”の捉え方

皆さんの幸せのポイントはどうでしょうか。給料日にちょっと高いおいしいものを食べる。好きな音楽を聴く。など、人それぞれ幸せだな・・と思う瞬間があると思います。

現在わたしたちは、モノに囲まれ、モノによって生かされている、モノに縛られた環境の中で暮しています。

良い家に住みたくて、いい車を買いたくて仕事をする。良い暮らしがしたくて、性能の良い家電を買う。性能の良いスマホを買う。。。

資本主義経済の世の中。モノはどんどん性能をあげ、食品も然り、多種多様なものがあふれる時代です。人は気づかないままに際限無くモノを求めているのです。

わたし自身牛乳を扱うパティシエールです。なかほら牧場のものではありませんが、アニマルウェルフェア認証を受けた牛乳でお菓子を作っています。お店で使うおいしい牛乳が、1000年先も残るように。食を扱い、頂く側の者として、自然の摂理の中でものを考えていきたいです。

作中にあった中洞さんの言葉。

際限なくモノを求めるのは、しあわせとは言えないよ

この言葉を頼りに読み進めることで、この著作の意味を考えてみてはいかがでしょうか。



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