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アニマルウェルフェアとパティシエ
アニマルウェルフェアとは...
感受性を持つ動物を、ストレスがないように、健康的な飼育方法を目指す畜産のあり方。
日本語では動物福祉とも呼ばれ、家畜を単なる産物ではなく、一つの命として考える。つまり、家畜をより自然に近い環境で飼育をすることを指す。
有名な話でいえば、フォアグラの反対運動などは皆さんご周知のはず。
ヨーロッパでは早い段階からこの考えが広まっており、英国では、ケージの中で飼育された工業的農産物が普及し出したのは1950年代ごろからだが、無理な飼育に反対する人々が声をあげたことで、1990年代には、鶏卵の放し飼いの生産量が増加し始めた。
また、オランダではBeter Levenという消費者向けのアニマルウェルフェア認定制度がある。アニマルウェルフェアの配慮レベルによって☆マークが1から3で格付けされ、消費者によりわかりやすい形で食材が選択できる仕組みとなっている。
日本では、このアニマルウェルフェアという仕組みはどれくらい浸透しているのだろうか。
かくいうわたしは、北海道に就職したパティシエール2年目である。自分の店で使用している牛乳が、アニマルウェルフェア認証を受けた牧場の牛乳であったことでその制度を知ったが、それまでは全く知らなかったのだ。
わたしが北海道で就職をした理由は、「原材料が見えるから。」という理由だった。
豊富な材料たちに囲まれる中、見えてくるのは、同じ材料であっても、内容はその土地、その農場の飼育、栽培方法によって全く違ってくるということである。
パティシエも良いものを作るために材料を選別するが、その思考はどこまで届いているだろうか。わたしたちは、生産者が大事に育てた材料を使う立場の人間であり、お客様(消費者)に届ける責任がある。
ヨーロッパの事例もそうだが、選択するのは消費者である。よってその対象は、よりクリアに、自分が何を食べているのかがわかる方が良いと感じる。
ましてや日本は国内自給率約39%の輸入品だよりの食品飽和大国。普段から自分の口にしてるものを追える人は少ないのではないだろうか。
パティシエの役割は、おいしいお菓子を作ること。それをお客様に届けること。
食材とお客様を繋ぐ立場にいるからこそ、食材に対して知識を深める必要があるのではないか。
普通の牛乳と何が違う?
では、肝心の味はどうなんだ。
ストレスフリーの放牧牛乳の面白い所はその日によって、季節によってガラッと味が変わること。
夏は草原を思わせるすっきりとした味わいであったり、寒い冬場は脂肪が蓄えられるせいか濃厚な味わいになる。それだけではなく、その日の牛の体調によっても違うのか、毎日少しずつ違う味を味わえることも魅力。
お菓子に使うとしたら難しいとも言えるかもしれないが、それが面白さであり、素材本来の味を活かしたプリンやソフトクリームなどは牧場ごとにも違う。
とあるアニマルウェルフェアの講義に参加した。
参加者はアニマルウェルフェアの基準を定める大学教授や学生、基準を定める側の人。または生産者、そして消費者。
わたしが気になったことは、料理人やパティシエなど、食材を生かして仕事をする人たちが参加していないことだった。
アニマルウェルフェアの基準についての内容は確かに難しいものである。もっと身近に知識が共有され、こんな材料、考えがある。ということが広がってほしいものである。
パティシエとしての生産者訪問
北海道は酪農大国。日本の酪農場の面積は国土に対してわずかなものである。そんな中広い土地を有する北海道は、牧場数も豊富で、牛乳の搾乳量も年々増えているそうだ。
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そんな酪農大国の中でわたしが訪れたのは、山林面積が多くを占める、遠軽町である。
本格的に来年スタートの酪農家さん。山を切り開いた広大な土地に牛たちは放牧されていた。
のびのびと草原で気持ちよさそうに日光浴する牛たち。
1頭1頭個性があり、それを愛しそうに見つめる酪農家さんが印象的だった。
そんな酪農家さんが語ったことは
「酪農家」という職業は将来無いかもしれない。
どういうことか。ー搾乳量が年々増加する中、酪農家の数は年々減少傾向にある。大手企業が大々的に経営するような大きな農場は全て機械で搾乳、人の手が少なくて済むような製造に変わっていっている。
高齢化で離農する人が増える中、新しく就農する人々は牛を買い、機会を買い、設備を整え…やること、費用も山ほどかかる。新規就農の難しさも語って頂いた。
ー牛を多く飼うのもいいが、その分堆肥も多く出る。肥料にするにも飽和な状態ならば、廃棄するしかないが、そればどこへいくのか。
そんな問題も語ってくれた。
餌のとうもろこしなども輸入に頼れば大きな金額に。最近では餌の高騰で困っているとも。
そんな中、個人で経営する牧場は個性を出し、ブランド力を上げることで生き抜こう。という所も多い。アニマルウェルフェアも、その価値の一つとなっている。
わたしが口にしているものはどこから?
どの牛乳にどんなストーリーがあるのか。そんなことを気にしなくてもいいのかもしれない。一つ一つ考えていたら切がない。
しかし、世の中は情報過多社会。自分の必要な情報は自分で取捨選択の時代だ。
たまには自分の口にしたものをついて考えてみる機会もあっていいのかもしれない。