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【読後感】イーロンがTwitterを買ってXに変えた理由が分かる本。

まさしく極厚の一冊でありました。


テスラを創り、専用のトンネルを掘り、最終的には宇宙を目指すイーロン・マスク。彼の源流が知りたくてこの本に辿り着いた。

最近では唐突にTwitterを買収し、あっという間にXという名前に変えてしまった。改悪の連続に利用者は辟易としつつも、彼の意向に従うしか術はない。

時代の寵児という言葉があるが、
彼には当て嵌るようで当て嵌まらない。なぜなら時代に翻弄されているというよりは、圧倒的な自己肯定感と、負けず嫌いと、兼ね備えたパワーでもって自ら時代を切り開いているように見えるから。

「悔しければ自分でやれば。」

そう言われればぐうの音も出ないほど圧倒的なエネルギーとスピード感で世界を変えてしまう。
果たして彼は、その先に何を見ているのか。これまでの背景と今後を紐解くカギとして「創始者たち」を読んでみた。

読後感を整理したい。



■リスクを負うものがリターンを得るという常識

南アフリカからイーロンが来て、ドイツからピーター・ティールが移住して、ウクライナからマックス・レヴチンがやって来て、天才たちはアメリカで出会い、会社を創った。

正確にはピーターとマックスがペイパル(PeyPal)社を創り、イーロンがX社を創り、それぞれが合併した形になる。

両社はいずれも(今では当たり前となった)金融のオンライン取引を志向し、くそったれ大銀行!の思想でフィンテックという潮流をつくった張本人たちである。

ペイパルはオンライン決済の第一人者


合併の際にイーロンは社名を(既に市場認知度が高かった)ペイパルに譲り、Xという社名は日の目を見ずに第一線から去ることとなる。

それでもCEOとして君臨。
しかしながら自らの思想を強烈に強いたイーロン(今と何も変わっていない!)は新婚旅行の最中にペイパル社を追放されるというクーデターにあってしまう。
つまりイーロンは自ら作った会社にて「X」という名前と、自らのビジネス思想を失うことになる。

しかしまぁ
アップル創業者のジョブス然り、ドットコムベンチャーの創業者っていうのはクーデターで追い出されるほど強烈でなければやっていけないというのが良くわかる。
楽天の三木谷さんもソフトバンクの孫さんもなかなかの独裁経営者だけどこの辺の本を読み漁るとまだまだ優しい方なんだなと思ってしまうから凄い事である。


とまぁここまでの話はあくまでもイーロンの強烈ぶりを示す事実に過ぎないのだが、個人的にはイーロンが単なる自己肯定感の高い嫌なやつでは結論付けられない、強烈な真実をも知ることとなる。

それが以下2点である。


①人より仕事を見るイーロン

まず、
合併したとはいえ自ら立ち上げた会社を追い出されたイーロンだったが、なんと退陣の際に激しく交戦することも無く会社にエールを送って潔く去っている。これは意外ではなかろうか。

彼は感情より未来を取ったのである。

イーロンは面と向かって退陣を迫らなかった相手を「腰抜け」と評しつつも、クーデターの首謀者であったピーターやマックスを優秀な経営者、優秀なエンジニアとしてそれでも認めていたのである。

人間関係と仕事を一緒くたにしない。気性が荒いようで実は冷静沈着。真理を見抜く場面では決して過ちを犯さない。これが彼をその後も失脚させなかった理由のひとつであろう。


そして、

②私財に興味のないイーロン

イーロンが去ってから、ペイパルはついにナスダックに上場を果たす。

これはネット上でお金をやり取りするという(当時の)非常識が覆った瞬間でもあった。多くの「こうあるべき」を突破して、今我々が当たり前に享受している便利を創ったわけだ。

そしてこの上場によって巨額の金を得たのがイーロンだった。


なぜイーロンが儲けられたのか。それは他でもない。彼はペイパル創業時に多額の私財を自分の会社に投資していたから。その私財の原資もまた、かつて自分自身が作り上げたアプリケーションを売って得た金であった。

彼は泣く子も黙る世界有数の資産家ではあるが、実は、すべては自らによる自らへの投資によって得たもの。つまり儲かった金はどんどん次の事業へと費やす。イーロンが欲しいのは金ではなく、思想の実現なのである。

会社を創ってその会社を大金で売り払うことを節目と捉え一般的には「EXIT」と呼ぶが、彼の場合は売った瞬間にスタートしている。まさに「ENTRANCE」なのである。



■クーデターとペイパル資金というENTRANCE

もう勘のいい方ならお判りだろう。
イーロンがTwitterを手に入れてXと名付けた理由が。

イーロンはまだ金融とITが全く融合されていない頃、金融関連サービスのすべてをネット経由で可能にするスーパーアプリケーションを創り、それにXと名付けることが夢だった。


しかしそれは、
クーデターという形で日の目を見なかったし、「X」という名前が世の中を席巻することは無かった。
そして今。莫大な資金と豊富な起業家としての経験を得て、機は熟したと見たのだろう。

イーロンは「ツイッターはX.comの当初のビジョンを加速させる」と明言しており、買収の裏にかつての思想があることを認めている。
今彼は、金融はもちろんショッピングもモビリティもなんでもかんでも、全てのサービスを一元化するスーパーアプリを創ろうとしている。

一から利用者を集めるのは困難なので、既に多くの人が登録を済ませているツイッターの買収に打って出たという訳だ。


我々利用者はツイッターをおしゃべりするだけの広場だと思っているけれど、それをイーロンは人が集まるなら商売のベースにするべきだと着目し、強引に舵を切った。
過去のリベンジと、過去からの思想を実現するために。

だからこそツイッターユーザーはイーロンに不満が募るし、多くを改悪だと感じる。そしてそれは真実なのだが、
人が集まれば商売が始まるというのは自然の摂理であり、多くの文化や文明はこの流れで生まれたのもまた真実である。


そんなこと許してたまるか!イーロンの言いなりになるものか!
と息巻く人もいるだろうが、そんな人も一方では当たり前のようにネットでモノを買い、ネットで金を払っている。
それが今から約30年前にそのイーロンが創り上げた世界だということも知らずに。


トランプの経済的参謀とも言われているイーロン・マスク。彼が手中に収めたXは、果たしてどんな未来を描くのであろうか。




ちなみに、
イーロンを追放した張本人であり、永遠の盟友でもあるピーター・ティール。彼はドナルド・トランプ元政策顧問であり、影の大統領と呼ばれている。

世界は広くもあり、狭くもある。果たして。







本日も、最後までお読みいただきありがとうございました!








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