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【読後感】アフターデジタル
オフライン(対面)が前提ではない世界。それがアフターデジタル。
顧客との接点は全てオンラインで行うのが当たり前で、現場・現物はあくまでも補足的な立ち位置になること。
なにやらドラスティックな変化が訪れるような気もするし、いやいや既にそうなりつつあるよね、とも思えます。
こちらの書籍は、そのアフターデジタルの世界観が日本より一回りも二回りも進んでいる中国に在住する著者が、現場での実例を元に様々な可能性を教えてくれます。
しかし、
この本の本質は「変化」ではなくむしろ、「不変」を説いていることにあると感じました。
それはどういうことなのか。自分なりにまとめてみます。
■ ジャーニー
ジャーニーとは「旅」「旅程」の意味。
この本はアフターデジタルで最も大事なのはジャーニー(旅)の設計だと述べています。
つまり顧客がデジタルによってどんな旅(新しい経験)を享受できるか。その設計が大事だと。
ちょっと待てよ。これってつまり、これまで数あるマーケティング関連の本に書かれているモノよりコトを売れ!!という大原則と何も変わらないじゃないか!
電動ドリルを売る、あの話。
ドリルを売りたければ穴を開ける行為ではなく、穴を開けることによって何が出来るかを顧客に訴えよ!というアレ。
そうなんです。実はオンラインが主流になろうがここは何も変わらないんですよね。
この本の凄いところは改めてここをはっきりとさせたこと。
デジタルの世界ってとにかくドラスティックな変化が多くて、すごく便利になるイメージが強いけど、だからこそ提供する側はその仕組みに躍起になってしまう。受け入れる側も「なんかすごいんでしょ?」と盲目的に期待してしまう。
実はここに大きな落とし穴があるんですよね。
その最たるものがAI。
AIと聞くとなんか凄いものがガラガラポンして、なんか凄いことが待ち受けているような気がします。でもほとんどの人はそれでどんな課題が解決されてどのくらいお金を払うに値するかを説明できません。
「AIがやってるんだー。すごーい」みたいな(笑)。
■デジタル人材
日本企業は既にハードのみでは戦えない業界がほとんどになっています。アフターデジタルな世界になれば、今よりもっと顕著になると想像に難くありません。
そんなこれからの時代、重宝されるのが「デジタル人材」。
データサイエンティストという人種の人たちが既に幅を利かせていて、自称データサイエンティストの”なんちゃって”まで出始めるほどバブル化しています。
僕はこのデジタル人材の定義を、
「マニアックなシステムの仕組みに詳しい人」
ではなく、前に述べたカスタマージャーニーの重要さと併せて、
「データを見てさまざまな発想ができる人」
にイメージを改めるべきではないかと感じています。
つまり、
世の中に蔓延る「なんか凄そう」をサービスという形に具現化して、それを実現するロジック(AI含むデータの活用)を提案出来る人。
分厚い参考書を隅々まで理解する必要なんかなくって、その代わりデジタルというキーワードでジャーニーの設計が出来る人。
そういう事です。
■最後に、
この本はこれから社会に出て、たくさんお金を稼ぎたい人が是非読むべき本ではないだろうかと思います。
変化の中にある不変を分かりやすく説いていて、真の「使える人材」をイメージするのにとても有効であると感じました。
また、
タイムリーにあの国の国旗のカラーをしてるんですよね。この本。
アフターデジタルは、平和な世界が前提であることもまた、真実です。
peace。