子供に主体性を返すことの重要性
記事の概要
私は仕事でオンラインPBLコミュニティの運営や、教育版マインクラフトの授業づくりをしています。これらの活動を通して感じた「子供に主体性を返すことの重要性」を訴えることが記事の概要になります。
主体性とはなにか?どうやって育むのか?
ここでの主体性は「誰かに止められることなく自らの意思で納得行くまで行動し切ること」を想定しています。主体性は自分が人生を楽しく生きていく上で、他者や世の中と折り合いをつけていく上で、とても重要な要素だと考えます。
では、主体性はどうやって育むのか。私の考えは、たくさんの「やってみたい」に挑戦することだと考えています。
次段落から、私がどのような経験からそう感じたのか、を説明します。
①オンラインPBLコミュニティの運営
仕事で学生さん向けのオンラインPBLの運営をしています。2020年にサービスがスタートして、5年目に入りました。本コミュニティでは、参加している人が対等にフラットなコミュニケーションができるよう配慮して運営をしてきました。
課題のセットは最初だけ、「やってみたい」は自ずと生まれた
初年度はプロジェクト未経験者しかいない状態で、プロジェクトのテーマをこちらで設定しました。内容はゲームを作るというもので、結果として2年がかりで作品が完成。
面白かったのは、その過程で作品に類する音楽や映像、漫画などを創作したいという様々な「やってみたい」が参加者から自発的にうまれたことです。これは
・フラットに自由なコミュニケーションが認められている
・自分たちの自主的なやってみたいが認められる場である
ことが参加者に浸透した結果だと思っています。
つまり「主体性を返す」が成立したからこそ皆の「やってみたい」が実現していったと感じています。
②マインクラフト教育版を使った授業実践
主にプログラミング教育の文脈で用いることが多い教育版マインクラフトですが、その真髄は以下の2点だと考えています。
・現実環境をシミュレートしているから「やってみたい」が生まれやすい
・ゲーム内の行動を止める大人はいない
順番に説明します。
現実環境のシミュレートはなぜ「やってみたい」をうむのか?
市川力さんが提唱する「Feel度Walk」という考え方があります。
歩きながら気になることを写真にとり、最後は絵に書いて発表するという一連の活動です。人は歩けばその景色の中に面白がれるものを見つける、そうした「子どもの頃の原体験の再現」をしている、とても面白い活動です。
※詳細はこちらの動画をどうぞ
マイクラは現実環境のシミュレートが出来ているからこそ、こうした人間が持つ面白がるスイッチが入りやすい。結果として「やってみたい」をうみだしやすい環境だと感じます。
例えば木が生えてる→木を切ってみたい→道具が作れる→道具を使ってみたくなる→家を作る、といった具合です。
サンドボックス型と呼ばれる自由度の高いゲームはたくさんありますが、こうした「やってみたい!」を引き出す余白があるゲームとしてマイクラがほかゲームと違うのは「現実環境のシミュレートをしている3Dゲーム」という点が大きいのではないでしょうか。
ゲーム内の行動は止める大人がいない
現実世界では保護者の常識や社会通念がある手前、建物中に爆弾を設置したり、部屋の中に大きな噴水を作ったりはできません。子どもたちは本来自主性を持っていますが、大人がそれを止めることで削いでいる側面があると思います。
しかし、マイクラの中では何をどれだけやっても良いのです。自分がやってみたいことを全て実現できる環境(主体性が思う存分発揮できる環境)であることが主体性を育む上で重要なポイントです。
結果として、マインクラフトで遊ぶと「やってみたい!」にどんどん挑戦することができ、生徒のみなさんが生き生き創作活動に励む様子が伺えます。
個人的な想い:学習性無力感を排除したい
自分の人生を振り返ると、学生時代は親や教師の言う事、校則などのルールが多い上に、知識と経験が浅く立場も弱い状態でした。いくつか自分の意思表示をしてみても、それらは「ルールだから」「決まりだから」とはねのけられ、正当な理由を教えてくれた人は多くありませんでした。
結果として「言うだけ無駄」という学習性無力感が強くなっていきました。
納得感は得られないし、自分の行動では何も変わらない。それが当たり前である、というを極力なくしたい。関わる仕事の中でも強く意識していたことです。
①②の経験から言えること
それぞれの経験から、子どもたちは「やってみたい!」を自由に発露できる環境でそれに挑戦し、なんらかの結果を得ることが学びに大きく寄与していると感じます。
では、ここで得られる体験がなぜ大事なのか。
そうした環境はどうやって整えるのか、を考えていきます。
なぜ主体性が大事なのか?
ズバリ言うと、こうした「やってみたい」に子供たちが挑戦して獲得していることは、社会活動とほぼ同じということです。子どもたちが「やってみたい」に挑戦するときのステップを書き表したものが以下です。
1.自分の意見・主張を持つ
2.他者に自分の考えを伝える(話し言葉・書き言葉)
3.他者の意見に耳を傾け、自分の考えを修正し、合意できる案を探る
4.合意したら、実際に実行をする
5.実行を通して表出する課題を解決する
6.やりきる。上記のアクションを通した人との関わりに感謝する
自分の意思でコトをはじめ、他者の意見の受け止め、自分の意権の振り返りを経て、しっかりやりきる。このステップは仕事や社会活動と同じではないでしょうか。
なにより「自分の力で社会を変えることができた」という実感が、その人を一番育てると感じます。
主体性を育む人はジェネレーターであれ
こうした主体性を発揮してもらう上で一番重要なのは「フラットな関係性が生み出す心理的安全性」だと考えます。子どもたちの「やってみたい」を引き出すことは、実際は難しい。まず我々は「大人と子供」ではなく「対等な人間だよ」というスタンスを示し、「何を言っても大丈夫な大人である」という認識をして貰う必要があります。
こうしたスタンスを見事に表現しているのが、市川力さんが提唱するジェネレーターだと思います。ぜひこちらの冒頭をお読みください。
教育関係者として、自分もジェネレータで在りたいなと強く思います。
最後までお読み頂きありがとうございました( ˘ω˘)
なにかしら刺激になれば幸いです。