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140字小説(ついのべ)/ 古い喫茶店を居抜きで買ったら他4作

2022年10月前半の140字小説(ついのべ)4作です。


古い喫茶店を居抜きで買ったら幽霊物件だった。探したら床下から人骨が出てきた。行方不明だった前の初老のマスター。あのダンディな幽霊に会えなくなるのは少し淋しいなと思ったが、結局、彼が成仏したのはその数年後だった。つまり、彼が認める珈琲を僕が淹れられるようになってから。
(2022.10.13)


とっても可愛い猫少女。幼いとき親に売られて改造手術を受けさせられて、こんな可愛い猫少女にされた。戦ったり裏切ったり騙したりして逃げ出して、今は懸命に働きながらコツコツお金を貯めて生きている。もう一度改造手術を受けて、猫少女じゃなくなるために。そうだ。完全な猫になるのだ。
(2022.10.12)


山道に女の死体が転がっていた。旅の途中で山賊に襲われたか。簡単に弔ってやった翌日、客が訪れた。「先日助けて頂いた骸です。恩返しに参りました」世話好きないい女だった。骸との生活は楽しかった。完全に腐る前に彼女が墓に帰ってしまうと、俺は武器を手に山に向かった。山賊を潰しに。
(2022.10.8)


「うち大家族で」「三世代同居とか?」「て言うか、祖父母と父母と私と弟妹で七人で、それから柱が……えっと八柱はいるのかな今。食費がすごくかかるし、お風呂の順番が大変」「柱?」「ときどき増えたり減ったりするんだけど」「柱?」「柱」神様の数え方。
(2022.10.8)



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