変わらず好きなもの
大好きなお店で友人2人とクリスマスランチ。五感が喜ぶってこういうことだなって、毎回体験できるエネルギーチャージの場所。
せっかくクリスマスだし!ということで、おそらく中学生以来のプレゼント交換。
プレゼント選びはその人の性格が現れるなって思う。
それぞれの好きなものを選んでくれた鍼灸師の友人。書くことに夢中になってるわたしに、万年筆を。オレンジ色が元気をくれる。
自分も欲しいからといって、柄違いでお揃いのバンブーファイバーのタンブラーを選んだ友人も。
さすが花好きチョイス。じゃんけんで選んだけど(笑)なんとなくそれぞれに合った色になった気がする。
わたしはというと、自分のお気に入りの詰め合わせセットを渡した。
バージニア・リー・バートンのちいさいおうちのイラストのメモ帳。大好きな絵本です。
フランスアルザスで修行した友人のお店で購入した、無農薬みかんとジンジャーのコンフィチュール。
それに、中学生の頃から好きな太田朋さんのポストカードを添えた。
「中学生くらいから好きなんです」と言ったら、「そんなに変わらず好きでいられるものがあるなんて、すごいね!」と言われた。
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太田朋さんのポストカードは、燃え盛る炎のように熱狂的に好き!というよりは、しんしんと降り積もる雪のように、わたしの中に時折ハラハラと好きの感情が落ちてくる感じ。
だから中学生のときよりも、今の方が「好き」が降り積もってる。
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中学生の時に通っていた塾の開始まで時間があると、駅ナカにある小さなポストカード屋さんに寄るのが楽しみだった。
いろんなカードがあったけど、わたしの定位置は太田朋さんのポストカードのラック。一枚一枚手にとって眺めていた。
この言葉いいな。
なんてステキな表現だろう。
そう思いながら、うっとりとしてるとあっという間に時間がくる。後ろ髪ひかれる思いで、足早に塾に向かう。
ある時、30枚綴りのポストカードブックが目に留まった。確か30枚で800円くらいだった気がする。
1枚だと150円なのに30枚でこの値段!!びっくりして、これはぜひ家に持って帰って眺めたい…と心臓ばくばく。
月のお小遣いが1000円だったわたしにとっては、1ヶ月分がほぼ吹っ飛ぶので、数日間迷ったが、意を決して購入したときのあの高揚感は格別だった。
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今でも一番好きな言葉はコレ。
いつもいつも誰かになりたかったわたし。
バスケ部でレギュラーになれたのは中3が4人しかいないから。下手くそなのはわかってるし、絶対周りもそう思ってるのに、試合には出れる。試合という存在が苦痛だった。
なのに、当時流行っていた後輩との手紙交換で「先輩は頭も良くてバスケもできて、憧れです!」なんて書かれると、居心地の悪さと自分への情けなさが押し寄せてきて、引退を待ちわびる毎日だった。
バスケが下手なのは技術的というよりも、どうやって動けばいいのかわからないという、本質的な部分が問題だったように思う。
相手がドリブルで攻めてきたら、こうディフェンスする、みたいなのが、練習ではできるけど、本番ではできない。わからないのだ。応用ができない。
言われたことはできるけど、自分でその場に合わせて動く、というのが苦手だったらしい。
今思うとそれは、空気を読むことが、出来なかったからなのかもしれない。
当時のほろ苦い感情は、心の奥の奥に、自分でも知らずに箱に鍵をかけて押し込めていた記憶のひとつだったりする。
太田朋さんのポストカードは、そういった、柔らかくて触れると壊れてしまいそうな、誰かに見せたくない自分を開く鍵だったりする。
その箱の中の感情は、わたしにとっては繊細で、思い出すと感傷的になったりもするけど、同時に当時の自分を愛おしくも思う。
もがいてた自分。今も変わらず悩んでいる自分。
太田朋さんが好きなのは、20年経った今でも、中学生の頃の気持ちを持ち合わせてる、変わらない自分がいることを確認したいからなのかもしれない。
幼稚なのかもしれないけど、もっと器用にスマートに生きていけたらいいなと思う反面、まぁこれがわたしだよねという、半分諦めというか、受け入れている自分もいる。
太田朋さんのポストカードは自分との対話をする一つのスイッチなのかもしれない。