見出し画像

【時間を忘れてゆっくりしたい人へ贈る短編小説】お風呂とココアがあれば

1

はあ。
早くここから出たいなあ。

白クマはぼんやりと、深緑色の板を見つめていた。
板には細くて白い模様がついている。赤や黄色の模様もある。

クリスマスツリーの飾りみたいだなあ。

「じゃあ今日は10月5日だから...」
ツリーの飾りつけをやめると、ゾウ先生は鼻で持っていたチョークを置いた。
カタッ。

あっ。

「15番は...」
ゾウ先生は鼻で出席簿を開いた。

スッと血の気が引いた。

「白クマ」

ああ、やっぱり。


その日の夜。
白クマはお風呂に入っている。

ふーっと鼻から息を吐く。力が抜けていく。

あがったらココアを飲もう。

ちょっとしあわせな気分になってきた。

お風呂とココア。
それさえあれば、僕はいいんだ。

そう声に出して白クマは、お風呂場をやさしく満たす湯気に少しほほえんだ。

いいなと思ったら応援しよう!

しろくまBGM工房
しろくまBGM工房は聴いてくれた人、地球を癒すために工夫して楽しみながら活動しています。いただいたサポートは活動費として使用しています