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「BROTHER」 迫真の演技の裏側に「ひとりアメリカ横断旅」

「BROTHER」 の解説・あらすじ・ストーリー(TSUTAYA DISCASより)

北野武監督第9作目。長期にわたるアメリカ・ロケを敢行した、ビートたけし主演によるハード・バイオレンス・アクション。ヤクザ同士の抗争で組織を追われ、日本を脱出しLAに移住したヤクザ組長の山本。彼は、そこで暮している弟を探し、そこに転がり込む。やがて、山本はヤクの売人をしていた弟とその仲間たちと共に縄張りを拡大。遂にはイタリアン・マフィアと抗争するまでに勢力を広げていくが……。


兄弟の繋がり方に血も間柄も人種も関係ない作品。

団塊世代である監督の白人に対するコンプレックス、差別をうけた日本人と黒人の反骨心、血のつながった兄弟、やくざの兄弟、弟分 、異国での弟分 それぞれの兄弟の関係性を描いた。

今作品ではやくざの山本組長役をビートたけし、同じ組の弟分の加藤役を寺島進が演じる。寺島にとって北野監督ともに憧れで恩人でもあるブラックレインの時の松田優作のような鬼気迫る演技は一見の価値あり。兄弟分原田役の大杉漣との絆。ワンポイントながら大物俳優を起用する高級クラブのママ役にかたせ梨乃、仁政会組長役の渡哲也から発する「圧倒的存在感」は感動すら覚える。

寺島進「北野監督を求めてアメリカへ」

今作品で一番の見どころは命がけで兄貴分(山本)を守る組の弟分(加藤)を演じたの寺島進の演技。その裏側にあるエピソードが存在する。

2人の関係性

北野監督は足立区梅島のペンキ屋のせがれ、寺島進は江東区深川の畳屋のせがれ、ともに下町育ちの職人の息子。お互い何となく吸ってきた空気感や雰囲気が似ている。

監督を追いかけて単身アメリカへ

寺島が「あの夏、いちばん静かな海。」に出演した後に監督がアメリカへ行くことを聞き、(男として惚れた監督が「アメリカで北野組の撮影するのか」との思い「会いに行きたい」衝動に駆られ、撮影先のロサンゼルスへ単身向かうことを決意する。

ロスアンゼルスに向かうもいったい監督はいつ来るか?に気づき、オフィス北野(当時の事務所)へ問い合わせをする。「(あの夏、いちばん静かな海)で軽トラの男役をやらせていただいた寺島って者なんですけど、監督がアメリカに行くのはいつですか?」と聞く。しかし事務所サイドは警戒心があり、なかなか監督の足取りを寺島へ伝えない。大体がその時点であきらめるが粘り強く寺島は事務所へ「いつ来るんですか~」とまずはニューヨークから電話で確認し、自身も移動しながら次はアトランタからその次はニューオーリンズから電話してロスアンゼルスへ近づく戦法をとった。

※監督がアメリカへ行ったのはぶん時系列でいうとキアヌ・リーヴス主演のJMと推測。

運転手から「ネクストバスストップ、ゲットアウトヒア」事件

移動方法はグレイハウンドバス(アメリカの格安長距離バス)。

長距離のため、車中泊をしながらの移動をする。夕方に出発して次の朝11時ぐらいに次の休憩所へ着く。朝、目が覚めた時についタバコを吸いたくなり、つい車内トイレで喫煙をした。気持ち良くトイレを出て席にもどるとなぜか運転手が寺島を見ている!これはただ事でない雰囲気を感じた時に運転手が「ちょっと来い」的な言葉を発した。運転手の所へ行くと「ネクストバスストップ、ゲットアウトヒア」次のバス停でおりろ!いきなりのレッドカードを突きつけられた寺島は辞典で反省(introspection)の英語を伝えても聞く耳をもたい運転手。次の停車場所のテキサスで強制下車。見渡すかぎり土色の風景・・・照りつける日差しも強くのども乾くし腹も減る。。しばらく歩くとピザ屋があった。店に入り、ビールとピザを頼んだ。バスを降ろされて意気消沈の気持ちも「今の俺は日差しがカンカン照りのアメリカの大地の上で楽しめってこと!なんだと気持ちを切り替えて、ビールを飲んだ!そのビールがうまいのなんのと気持ちを切り替えて、ポジティブになる!この話をぜひ映画化してほしいと思うほど。

ロスアンゼルスまでの道のりもあるので、ヒッチハイクで向かおうとする。たまたま近くあったガソリンスタンドで止まってる車を見つけたので「ロスまで乗せてくれない?」とたどたどしい英語で伝えるが「フロリダへ帰らないといけないから方向が逆だ」と言われ、「んじゃぁ~どうすれば」と聞くと「部品屋の近くにバス停がある、そのバス停にまで良い!」と言われたのでバス停で待つこと。便が1日2便しかなく、降ろされたのが10時40分ごろで次のバスは16時40分何とかバスに乗れた。

北野監督と再会

ようやくロスアンゼルスにつき、ハリウッドに近いモーテルに入り、事務所へ電話をする。すると

「寺島さんのホテルの電話番号を教えてください。」と聞いていたので伝えると、それから間の無い夕方ごろに「たけしだけど、今はどこにいるの?」と電話があり、今いるホテル名を伝えるとフロントから連絡があり急いで行くとそこには北野監督と森社長(当時)が立っていた。

その瞬間!もう~うれしくて~笑いが止まらない!そしたら監督が「あんちゃんよ~今度はいい役あるからよ。おいらの子分で沖縄に行く話。」映画ソナチネへの出演オファーだった。しかも寺島は監督がアメリカに来た理由も「北野組の撮影」と思っていたが他の別件(「JM」多分)だったことが分かった。早とちりなひとり珍道中も無事に到着した。

その数年後に今度はそのアメリカロスアンゼルスで撮影したBROTHERの重要な弟役の役で起用された。北野監督を追ってアメリカまで行った時の情熱をこの役にぶつけ、寺島進の代表的な作品となった。


銃撃シーンに欠かせないガンエフェクトとは?

今作では銃撃戦が見どころの一つである。

その銃撃戦に欠かせない特殊効果である ガンエフェクトがある。日本は銃社会でないため、映画の撮影や様々な映像作品の時に銃を使用するシーンについては演者への安全や事故防止のため実弾を使用する事はないため、日本独自のガンエフェクトという特殊効果がある。ガンエフェクトの銃は特殊加工を行い、安全で本物の銃に近い臨場感を生み出すことができる。北野組では日本のガンエフェクトの第一人者である納富貴久男氏が担当している。約35年以上に渡り、銃への規制が厳しい日本で銃を表現してきた。特に北野作品では銃は欠かせない道具の一つ。

その銃により作品の生と死の狭間の表現を求められている。そのため薬莢の落ちる金属音やまたガンマニアは銃の発砲音でどんな銃が分かるガンマニアも納得するガンエフェクト技術。特にこのBROTHERでは「銃」が大きな作品の要素。ぜひ銃撃戦を観て欲しい!


BROTHER 鑑賞ポイント!

・冒頭から約7分、山本は一言も発しない。表情で伝える

・名台詞:「ファッキ〇ジャップくらい分かるよ!バカヤロー!」

・ワインシーンで目をつかれたデニーと山本の最悪な出会いから兄弟関係への変化

・山本を日本から追いかけてきた加藤の兄貴に対する単なる兄弟愛でなはい「愛」の強さ

・年の離れた腹違いの弟(真木蔵人)の外国人に負けないサイズ感と画力

・日本風なイカサマシーンの遊び心

粋なラストシーン

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