135 医師が覗き見る「日本社会のイマ」
経済を眺めていると、底に政治が横たわっている事に気付かされるこの頃である。その辺をザックリであるが覗き見る。
FRBは急激な金融引き締めでインフレを沈静化したい。言い分は、インフレは低所得者の生活を脅かしている。インフレとの戦いは彼らを救う意味もあると。これはバイデン大統領の政治信条とも重なる。もしかすると忖度が働いているのかも知れない。しかし、中間層は引き締め効果で資産が大幅に目減りしている。もし共和党政権であったら、これを容認することはできないはずだ。中央銀行の独立性との絡みから、単なる推測なのだが、格差社会をある程度認める共和党と、無くしたい民主党の思想がぶつかり合い、現在は後者に傾いている様にも見えてしまう。
格差是正を突き詰めると、マルクス主義に行き着くのだが、これはすでにソビエト連邦で社会実験されていてる。共産主義の弱点は経済学で言うモラルハザードであり、それ故にこの社会は進歩について行けない事が実証されている。中国はその辺を学習していて、独特のバランス感覚で、経済発展を成し遂げて来た。共産主義国である事を忘れてしまう。
日本は資本主義国であるが、社会主義国家に近いスタンスであろう。護送船団方式とか年功序列制と揶揄された社会も徐々に変革して、モラルハザードの問題点を消化して行くのだろう。
そんなわけで、この議論は突き詰めて行くのではなくて、バランスを重んじての議論が正論となろう。
私もハイパーインフレは回避すべきと思う。これが資本主義の凋落に繋がると言う意見にも賛成する。
しかし、現在のFRBのスタンスは一方的に見えてしまう。これは、自分達の経済見通しの失敗に気づき、過剰反応をしている様にも見える。
日銀の三重野総裁時代も同じように不動産バブルを自分達の過失と捉えて、インフレでもないのに反射的に公定歩合を急上昇させ、総量規制まで導入して、経済活動を抑制し、立ち直れない20年間のデフレに導いてしまった。
FRBの言うとうりに物事が進むと、先ほど言及したモラルハザードの危険に直面するかも知れない。さらには立ち上がれないデフレに陥るかも知れない。
そんなに目くじらを立てないで、心に余裕を持ってインフレをコントロールすればと言う論調もそろそろ聞こえてくるはずだ。すでに、FRBの経済見通しは現実的でないと言う見解も出てきている。
それにしても黒田日銀総裁のポーカーフェースと余裕には立派という言葉しか見つからない。「鼻くそほじって、ふんぞり返っているだけ」と中傷する人もいるのだが、私はそうは思えない。
postーコロナはウクライナ戦争だけではなくて、FRBとの戦いなのかも知れない。
モラルハザード:経済学でいうモラルハザードは、倫理観の欠如ではなく観察できない状況で(自然と起こる)エージェント側の不利益をもたらす行動。
人は「サボっても同じ結果が得られるのならサボろう」と考えがちである。
モラルハザードを防止・回避するのはとても難しい。