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ダイレクトエアキャプチャー(DAC)って何?

サステナビリティ分野の仕事について24日目の本日は、日経のニュースを見て気になったことばを調べることにします。



1.大気から直接CO2を回収する技術

ダイレクトエアキャプチャー(DAC)ということばが出てきたのは、こちらの記事です。

大気中の二酸化炭素(CO2)を直接回収する脱炭素技術、ダイレクト・エア・キャプチャー(DAC)を実用化する動きが広がり、このDACから生まれるカーボンクレジットを調達する動きが加速してきた。全日本空輸(ANA)や米アマゾン・ドット・コムがこのほど米国企業と調達契約を締結。航空業界を中心に脱炭素を支える存在として期待が高まるが、日本での事業拡大には難しい面があり、海外企業とどう連携するかが焦点になる。

これ、なんと、大気中の二酸化炭素(CO2)を直接回収する技術なのだそうです。(回収したCO2は地中に埋めます)

私がいままで学んできたのは、CO2の「排出量を減らす」という気候変動緩和策でしたが、そういう間接的な方法ではなく、ダイレクトに減らそう、ということですか!できたらそれはすごいなぁ…

日経の別記事には図解も載っていました。

出典:日経電子版2021年1月31日
CO2を大気から直接回収 脱炭素を担う新技術 実用化へコスト課題に


2.DACCSとの違いは?

経産省の資料を見ると、DACではなくDACCSと書いてあったりしますので、この違いを調べてみました。

DAC(Direct Air Capture、直接空気回収技術)は、大気から直接、二酸化炭素(CO2)を分離・回収する技術のことをいいます。
(中略)
CO2を回収した後に貯留するCCS(Carbon dioxide Capture and Storage、CO2を分離・回収し地中などに貯留する技術)とあわせて、DACとCCSをつなげてDACCSとも呼ばれます。


おお、なるほど。DAC+CCSなのですね。(CCSは聞いたことがあります)


3.DACの種類と課題

上述のウェブページによれば、DAC技術には大きく下記の4つの方法があるのだそうです。

出典:産総研マガジン 2023年8月30日「”DAC(直接空気回収技術)”とは?」


共通の課題は、エネルギーコストの高さ。

DACに共通する課題は、エネルギーコストの高さにあります。(中略)DACに必要なエネルギーをどのように供給するかという点も考慮に入れなければいけません。CO2を回収するために、化石燃料を用いて発電しCO2を排出するのは本末転倒です。風力、太陽光、地熱などの再生可能エネルギーを用いることが重要ですが、現時点で日本において、低価格で潤沢な再生可能エネルギーを供給することはできていません。

出典:産総研マガジン 2023年8月30日「”DAC(直接空気回収技術)”とは?」

日経の下記記事によれば、「現状、DACによるCO2回収コストは1トン当たり500〜600ドル、あるいはそれ以上」とも言われており「技術革新と安い電力の利用を見込んでも200〜300ドル程度という見方もある」のだそうです。


4.それでも大きいDACへの期待

コストを下げる方策はいまだ見つかっていなくとも、DACには大きな期待が寄せられています。その理由は…

50年ネットゼロは達成できないかもしれない。そうなれば大気中に目標以上に放出されてしまったCO2をネガティブエミッション技術を使って回収し、CO2濃度を下げることとなる。これがいわゆるオーバーシュートシナリオだ。DACは目標未達成時の救済手段とも言える。

国際エネルギー機関(IEA)のネットゼロシナリオでは50年にはDACで年間10億トンもの回収を見込む。日本の排出量並みの規模であり、大きな市場と期待されている。いずれカーボンプライスは上昇するだろうし、DACコストも低下するからコスト面でも商用化も可能だろう。

日経電子版 2023年7月17日
CO2を大気から直接回収「DAC」、脱炭素切り札なるか


そうですよね。
考えたくはないけれど、(さまざまな努力にも関わらず) 排出量削減が遅々として進まない現状を見る限り、「50年ネットゼロが達成できない」時のことも考えておかなければならないわけです。

その時に「直接吸引する」という手があるのであれば、どれほど心強いことでしょう。この技術、大いに関心をもって注目したいと思います。


5.回収したCO2は合成燃料の原料に

EUがエンジン車の新車販売を全面禁止する従来の方針を撤回し「合成燃料の利用に限って販売を継続できる」という形に改めたことを以前のnoteにも書きましたが、この「合成燃料」とDACで回収するCO2には関係があるようなのです。


まだ少し調べただけですが、経産省の資料としては下記が:

出典:石油連盟 2022年10月7日
「合成燃料の実用化・商用化 に向けた挑戦」(経産省資料)


日経XTECHの記事には下記がありました。

合成燃料の製造方法としては、さまざまなプロセスが検討されている(図1)。この中で、CN燃料として認定を受けるには、基本的には水素(H2)とCO2を原料とする必要がある。ここで重要になるのが、合成ガスの生成に必要な多量かつ高濃度なCO2をいかに確保するか、という点である。CO2自体は、大気中にも一定程度含まれているが、合成燃料などの工業原料として利用するためには、その分離・回収技術が鍵となる。

また、大気中のCO2は温暖化ガスの1つでもあるため、CO2を回収することで大気中のCO2濃度を下げることができれば、より直接的に地球温暖化対策にも貢献できるという一石二鳥の効果も期待できる。

このような背景から、近年、CO2回収・有効利用・貯留(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage、CCUS)と呼ばれる技術が注目を集めている(図2)。CCUSは、CO2回収・貯留(Carbon dioxide Capture and Storage、CCS)とCO2回収・有効利用(Carbon dioxide Capture and Utilization、CCU)に大別される。

出典:日経XTECH「合成燃料の鍵握る原料としてのCO2」


この記事にもあるとおり、CO2の直接回収で大気中のCO2濃度を下げ、かつ、そのCO2を再利用することができれば一石二鳥です。この技術開発についても引き続き追っていきたいと思います。


6.DACはネガティブエミッションのひとつ

ネガティブエミッションは、大気中の温室効果ガスを人為的に回収・除去し貯留・固定化することで大気中 のCO2を除去する技術で、DACはその有力なひとつです。

出典:経済産業省産業技術環境局 2022年2月「ネガティブエミッション技術について」


ブルーカーボン(海洋生物の作用によって、大気中から海中へ吸収された二酸化炭素由来の炭素)も、ネガティブエミッションのひとつなのですね!

先日、持続可能な漁業(主に完全養殖)について学んでnoteを書いたばかりですので、このテーマにもとても関心があります。こちらも近日中に調べたいと思います。


なんだか、「点」として学んだことが少しずつつながって「線」になってきたような感覚があります。年内には「面」に育っていくといいなぁ。

引き続きがんばります!それではまた明日。


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