「緑の黄金」アボカドを食べるときに思い出したいこと
渋谷のあたりを歩いていたら、なんだかやたらとアボカドのお店を見かける気がします。調べてみたら、アボカド専門店って今、人気なのだそうで。
でもアボカドには、サステナビリティ担当者としては見過ごせないさまざまな問題があるのだとか…。今日はそんな話をまとめてみたいと思います。
世界各国で大人気となったアボカド
日本では30年間で輸入量が20倍以上に
美容と健康によい食材として注目され、女性を中心に人気の食材となったアボカドの輸入は2010年代から爆発的に伸び、1988年から2019年の30年間で輸入量が20倍以上になりました。
アメリカでも年間消費量が20年間で5倍に
アボカドの人気は日本だけではなく、「ここ数十年でアメリカ・アジア・ヨーロッパでの人気が爆発的に高まって」いるのだそうです(注1)。特にアメリカでは、1998年から2017年まで20年間に年間消費量は5倍(1人当たり消費量は6倍近く)になり、メキシコで生産されるアボカドの8割がアメリカで消費されているのだとか(注1、注2)。
「アボカドマネー」をめぐる脅迫が起きている
貧困地域に富と雇用をもたらしたアボカドの需要と価格の高騰
アボカドの人気の高まりに対して生産量の増加が追い付いていない状況について、出典(注1)では以下のように記述されています。
「緑の黄金」となったアボカド
需要に対して供給が追い付かなければ、当然価格は高騰します。こうした中、メキシコでは「アボカド長者」が誕生するまでになりました。
NHKは、メキシコの中でも輸出用のほとんどを作っているという中西部のミチョアカン州を取材し、以下のような事例を紹介しています(注3)。
ミチョアカン州から輸出される金額が年間約30億ドル(約4000億円)にものぼるようになり、“緑の黄金”と呼ばれるまでになったというアボカド。
アボカドで貧困が解消され、雇用が生み出されたのは良いことなのですが、このような「アボカドマネー」が2つの大きな問題を生んでしまった側面もあるのだそうです。
「資金源」として目を付けられたアボカド
麻薬カルテルによる脅迫が起きている
問題のひとつは、脅迫です。
麻薬カルテルが薬物に代わる「新たな資金源」としてアボカドに目をつけた結果、農家を脅して売り上げの一部を巻き上げたり、農園自体を乗っ取ったりという犯罪行為が各地で横行し、街の治安悪化を引き起こしているのだそうです。
大統領が軍隊と警察を派遣したこともあり、農家側が自警団を作ったりの努力も進められていますが、なかにはカルテルに手数料などを払ったほうがいいと考えて、それを実行している農家もあるのだとか(注4)。
2022年には、輸入アボカドの品質を検査する米当局者がメキシコの犯罪組織から電話で脅迫を受けたため、メキシコ・ミチョアカン州からの検査を中断したとの報道もありました。
数日後には輸入が再開されたとの報道があったものの、この報道は、「アボカドマネー」をねらうメキシコの麻薬カルテルによる脅迫がいまだ治まっていないことを印象付けました。
多量の水を必要とするアボカドの栽培
NHKの調べ(注3)によれば、
アボカドはこの地域に従来生えていたマツに比べて、樹木1本あたり5倍以上も水を吸い上げる
州の一部の地域ではアボカド農家が栽培用の水を確保するため、付近の小川や井戸から違法に水をくみ上げ、巨大なため池を作ってしまうケースがある
とのことで、もともとやせた土壌、水はけが良い(つまり、常に水不足になる)土地で栽培されるアボカドがその栽培に多量の水を使用するということは、現地の水不足が深刻にしてしまうという側面もあるのです。
私たち消費者にできることは
さて、このような事実を知った上で、私たちはアボカドとどう向き合っていけば良いのでしょうか。
このような指摘がありました。
消費者としての一つひとつの選択や発信が状況を変えて行く助けになるとの指摘です。持続可能なアボカドについての発信は、最近、買い物の時に見かけることがあるので、品物を選ぶ時に注意していきたいと思います。
なお、今回調べている中で、こんな記事も見つけました。
上述のミチョアカン州のアボカド農家の3代目の男性が、2018年にアボカドの流通を透明化するプラットフォームとして開発した「アボプライス」や、米スタートアップのプロデュースペイが2021年に立ち上げたメキシコの生産者と米国の購入者をつなぐ農作物用の仲介プラットフォームの話が紹介されています。
こうした取り組みも知り、応援していきたいと思います。
以上、サステナビリティ分野のnote更新1000日連続への挑戦・33日目(Day33) でした。それではまた明日。
(注1)出典:船昌商事株式会社「輸入アボカドについて」
(注2)全世界のおよそ3割に相当する244万トンのアボカドがメキシコで生産され(2021年実績)、うち4割が輸出されている。輸出量の8割がアメリカ向けで残りの2割がカナダ、日本、スペイン向けとなっている。(以上出典:品目別貿易情報)
(注3)NHKウェブサイト 2022年6月14日 16時30分 「アボカドブームの“不都合な真実” 環境問題や誘拐事件まで?」
(注4)東洋経済ONLINE 2019年5月7日「日本人が知らない「アボカド」生産農家の悲哀 アメリカでアボカド価格急騰のワケ」