透明なふたり / 第一回笹井宏之賞応募作

思春期のウルトラ / 連作短歌10首

ウルトラの母がウルトラライトダウン着て飛んでゆく 冬がきました

階下からご飯よ降りてきなさいと呼んでもウルトラは反抗期

ウルトラは足が速くてクラスいちの人気者だった去年まで

好きな子とすれ違うとき学ランのなかでウルトラ胸部点滅

ヤンキーの先輩教室へやって来て俺のツノに野次を飛ばす

進路希望調査票にヒーローと書きたくなくて丸めて捨てた

ウルトラの父さん昨日テレビに出てたね。ウルト

天国一年生 / 連作短歌12首

天国はなんかもっと白くってふわふわしてると思ってました

建物の角のとことか結構黒ずんでたりするもんなんすね

俺よりも先に逝ってた友だちが先輩面でイチネンと呼ぶ

かつて生命線だったであろう空白握るつめたいてのひら

植物のかたちをしている硝子あちらこちらに群生しており

やすみなく金木犀が咲き誇り金色の絨毯は分厚く

人により見える世界がぜんぜん違ってるらしい「VRじゃん」

現代の技術革新す