すしログ江戸料理帖【兼好椀(けんこうわん)】
「すしログ江戸料理帖」は今や絶滅危惧の「江戸料理」の魅力を伝えるレシピ紹介マガジンです。僕に「江戸料理」の魅力を伝えてくれたのは「江戸前芝浜」の海原親方です。この方は凄い料理人で、江戸時代の文献を読んで江戸料理を現代に復活させている偉人です。
そして、僕も江戸料理の人気向上のために貢献したいと思い、本マガジンを始めました。江戸料理の魅力を簡単に挙げると以下のとおりです。
シンプルで手軽
季節や旬を感じられる
ヘルシー
日本酒との相性が抜群
江戸料理の魅力が伝われば幸いです!
さて、前回は江戸料理【白瓜の冷や汁】を紹介しました。
今回紹介するレシピは【兼好椀(けんこうわん)】です。
この料理は名前のとおり兼好法師が好きだったとされる椀ものです。お吸い物にアジの干物を使うところがユニーク!生の魚ではないので扱いが簡単で、美味しさを再現しやすいところがポイントかと思います。椀ものですが、白ご飯にも合う味わいです。
【兼好椀(けんこうわん)】
吉田兼好法師と言えば、頭に浮かぶのが『徒然草』ですね。「日本三大随筆」のひとつ(他は『枕草子』と『方丈記』)。冒頭の文句は有名で、小学生の頃に覚えさせられたのではないでしょうか?
兼好法師の生没年は1283年~1350年なので、江戸時代ではなく鎌倉時代末期から南北朝時代に生きた人となります。しかし、江戸時代にも知名度を誇り、17世紀には空前の『徒然草』ブームが起きました。
そして、実は、「吉田兼好」という名前は江戸時代の歴史家による捏造だと考えられています。覚えさせられた身としては結構ショッキングですね(笑)
ただ、このような人気を誇ったからこそ、好きだった料理が残ったのかもしれません。あるいは人気が高すぎてあやかった料理が創作されたのか。いずれにせよ美味しいので、ありがたく頂くことにしましょう。
使用する材料・調味料
大人2人分の材料です。
アジの干物:1尾
葉っぱ付きの蕪:2個
鰹出汁:450cc
醤油:少々
生姜の搾り汁:好みの量
・鰹出汁は鰹主体の出汁パックでも構いません。また、白だしなどでも美味しく作れますが、その場合には醤油は使わない方がベターです(白だしとアジの干物の塩分のみで味が決まるので)。
レシピ(作り方)
蕪の根を1個6等分に切り、鰹出汁で弱火でコトコト煮る。
透き通って柔らかくなったら、細かく刻んだ葉と茎を加えて火を止める。
アジの干物を焼いて、頭や骨、ゼイゴを取り除き、ほぐす。
再度温めた1に2を加えて、味を見ながら醤油を香り付けで加える。
椀の底に生姜の搾り汁を引いて、5を盛り付けて完成!
・蕪の葉と茎はシャキッとした食感がある方が美味しいと思うので、余熱主体で火を入れています。
最後にひとこと
鰹出汁に鰺の干物の旨味と香りが滲んで美味しい!
そして、生姜汁が良い臭み消しになります。
鰺の干物の香りと塩気が、どことなく野趣のある蕪と絶妙なコントラスト。
これは他の料理では味わえない趣があります。
素朴ですが、じんわりと美味しい秋向けの椀です。
ペアリングについては汁物なので今回についても割愛します。
また次回を楽しみにして頂ければ幸いです。
励ましの「スキ」を頂けると、次のレシピを書く原動力になります!