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すしログ江戸料理帖【煎酒(いりざけ)】

「すしログ江戸料理帖」は今や絶滅危惧の「江戸料理」の魅力を伝えるレシピ紹介マガジンです。僕に「江戸料理」の魅力を伝えてくれたのは「江戸前芝浜」の海原親方です。この方は凄い料理人で、江戸時代の文献を読んで江戸料理を現代に復活させている偉人です。

そして、僕も江戸料理の人気向上のために貢献したいと思い、本マガジンを始めました。江戸料理の魅力を簡単に挙げると以下のとおりです。

  • シンプルで手軽

  • 季節や旬を感じられる

  • ヘルシー

  • 日本酒との相性が抜群

江戸料理の魅力が伝われば幸いです!
さて、前回は江戸料理【茄子の蒲焼きもどき】を紹介しました。

今回紹介するレシピは【煎酒(いりざけ)】です。【煎酒】とは、江戸時代に醤油が普及する前に主流だった調味料です。あまりにも醤油が便利すぎて、しかもリーズナブルに手に入る世の中ではマイナーになってしまった【煎酒】ですが、今だからこそ美味しく使える調味料です!

江戸料理を語る上で避けて通れない調味料。
…地味ですが、重要なので読んで頂ければ嬉しいです(笑)


【煎酒(いりざけ)】

【煎酒】は室町時代に考案されたとされ、「日本最古の料理専門書」と言われる『料理物語』でレシピが紹介された調味料です。『料理物語』の刊行は1643年(寛永20年)!この書物では、醤油がほとんど使われておらず、【煎酒】が最も多用されています。千利休が確立した茶懐石においても、伝統的には醤油は使わず【煎酒】を使用します。

【煎酒】は梅干しを使うところが最大の特徴で、古酒、鰹節と一緒に煮て作ります。梅干しの酸味と塩気、古酒の甘味、鰹節の旨味が合わさることで、現代の白だしのような使い方ができる万能調味料です。

なお、料理用語で重要な「塩梅」という言葉は【煎酒】が由来とされています(僕も初めて知った時、なるほど!!と思いました)。

煎り酒は かつほ一升に梅干一五廿入古酒二升水 ちとたまり少入一升にせんじこしさましてよし又 酒二升水一升入二升にせんじつかふ人もあり

『料理物語』第八なまだれだしの部

鰹節1升に梅干15個〜20個、古酒2升、水少々、たまり(味噌の上澄みの液体)少々、1升まで煮詰めて、濾して、冷まして使う。

流石にこの量だと使いきれないので、少量ずつ作るのが良いですね。

使用する材料・調味料

使いやすい量です。使用頻度が高い場合、倍にして作ってください。

  • 梅干し(大サイズ):1個

  • 日本酒:200ml

  • 鰹節:5g(市販の小分けパックだと2パック)

・梅干しは塩だけで作られているものを選びましょう!(調味液づけの梅干し風の梅漬けではなく)

・日本酒は古酒だと甘味が高まるのでベターですが、手に入りづらいので常温で販売されているもので構いません。ただ、絶対に「純米酒」を選んでください!

・昆布(5cm四方)や淡口醤油少量を加えると、より白だし風になります。デフォルトの味が味気ない方はアレンジしてみてください。市販品では概ね昆布系の旨味が使用されています。

レシピ(作り方)

  1. 鍋に日本酒を張り、軽くちぎった梅干しと鰹節を入れて、中火で煮る。

  2. 日本酒が半量になったら火を止めて、さらしやクッキングペーパーなどで濾して完成!

・最後に味を見て、塩気が足りないようなら塩を加えます。

・もしも一度作ってみて味がピンとこない場合は、原因は日本酒だと思います(僕も経験があるので)。銘柄を変えてみるのも一手です。

最後にひとこと

一度使ってみると、【煎酒】は素晴らしい万能調味料だと実感します。次代に流されてマイナーになっていくのはもったいない!

様々な使い方が出来る調味料ですが、特に白身魚、鶏肉、豚肉との相性が抜群です。赤身魚や牛肉には醤油がベターです。

【煎酒】は市販品もありますが、砂糖や昆布エキスにとどまらず、うま味調味料などが使われていて、もはや【煎酒】ではありません。中には真っ当なものもありますが、自家製した方が美味しい調味料だと思います。

今後、【煎酒】を使ったレシピも紹介していきます!楽しみにしていてください。


また次回を楽しみにして頂ければ幸いです。

励ましの「スキ」を頂けると、次のレシピを書く原動力になります!


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