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すしログ江戸料理帖【鶏肉の和蘭陀(オランダ)煮】

「すしログ江戸料理帖」は今や絶滅危惧の「江戸料理」の魅力を伝えるレシピ紹介マガジンです。僕に「江戸料理」の魅力を伝えてくれたのは「江戸前芝浜」の海原親方です。この方は凄い料理人で、江戸時代の文献を読んで江戸料理を現代に復活させている偉人です。

そして、僕も江戸料理の人気向上のために貢献したいと思い、本マガジンを始めました。江戸料理の魅力を簡単に挙げると以下のとおりです。

  • シンプルで手軽

  • 季節や旬を感じられる

  • ヘルシー

  • 日本酒との相性が抜群

江戸料理の魅力が伝われば幸いです!
さて、前回は江戸料理【サンマの有馬煮】を紹介しました。

今回紹介するレシピは【鶏肉の和蘭陀(オランダ)煮】です。

【鶏肉の和蘭陀(オランダ)煮】

「オランダ煮」とは、食材を油を用いて炒め煮や揚げ煮する調理法を意味します。中国料理が長崎に入って生まれた卓袱(しっぽく)料理の流れをくむ料理です。当時の日本では油を料理に用いることが極めて少なかったので、油を使う料理は斬新でモダンにとらえられたようです。

現在の日本では油を用いる料理が当たり前になっているので見落としがちですが、油は加熱の意味だけでなくコクを与える調味料としての役割もあります。淡白な味わいが多かった江戸時代に、「オランダ煮」は極めてパンチのある料理だったのだと思います。

1820年(文政3年)に刊行された『精進料理 素人庖丁』で紹介されている「オランダ煮」は野菜を用いた精進料理です。今回は鶏を用い、葛打ちして餡をかけました。とろみが付いている料理は、寒くなる時期に嬉しくなりますね。葛でなくても片栗粉でOKです。

使用する材料・調味料

大人2人分の材料です。

  • 骨付きの鶏もも肉:1本

  • 生姜の皮:適量

  • 色味のある野菜(僕は茹でたインゲンと塩漬わらびを使用)

  • 胡麻油:適量

鶏用の煮汁

  • 清酒:1/2カップ

  • 水:1/2カップ

  • 醤油:大さじ1

  • 砂糖:大さじ1

  • 赤味噌:小さじ1

  • 米酢:小さじ1

  • 鰹出汁:1/2カップ

  • 醤油:大さじ1

  • 砂糖:大さじ1/2

  • 味醂:小さじ1

  • 水で溶いた葛(あるいは片栗粉)

  • 和芥子:適量

・骨付きの鶏肉の方が美味しく仕上がります。ただ、無い場合には骨なしでも大丈夫です。鶏肉が浸らないようなら水を増やします(鍋の形状、サイズに合わせて)。

・鰹出汁の代わりに白出汁を用いる場合には、醤油の量を減らして塩分を考慮してください。

レシピ(作り方)

  1. 骨付きの鶏もも肉は血や汚れを取り除き、3つに切る。

  2. 鍋に胡麻油を引き、もも肉の表面の色が変わるまで焼く。

  3. もも肉と生姜の皮を鶏用の煮汁で1時間ほど煮る(強火→沸騰したら弱火)。

  4. 餡を作る。とろみは付けすぎないよう、葛もしくは片栗粉を溶いた水を少量ずつ加える

  5. 鶏肉を器に盛り付け、野菜も盛り付けてから餡を掛ける。和芥子を添えて完成!

・調理は簡単です!大きめの鍋で大量に作るのもアリです。アレンジとして、餡にお酢を加えるとサッパリ味になります。

最後にひとこと

長崎発祥らしく、贅沢に砂糖を用いるところが魅力です。
僕はふだんの料理で砂糖をあまり使いませんが、こちらのようなクラシック料理には使わないと美味しくない!と実感しました。

甘味ととろみが優しい味わいと口当たりで、よく煮込まれたホロホロの鶏肉と抜群の相性です。
甘味のある餡の奥から鶏の肉汁がじゅわっと弾け、ゼラチン質と旨味が舌に広がります。

ペアリングについては、以下のとおりです。

  • 天狗舞や菊姫など、山廃仕込の純米酒

山廃らしい旨味と酸味を合わせるのがオススメです!
味わいだけでなくメイラード反応による色合いも料理に合います。


また次回を楽しみにして頂ければ幸いです。

励ましの「スキ」を頂けると、次のレシピを書く原動力になります!


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すしログ(大谷悠也)
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