懐かしく、愛おしい味 #登治うどん
うどんはあまり好きではない。ただ、好き嫌いを超えた味が数年ぶりに私を呼び戻した。これは懐かしの味、高校の部活終わりによく食べていた青春の一部。昔は窓際の座敷で食べていたな、と回想しながら空いているテーブルに座る。
メニューを見渡す。親からの小遣いでやりくりしていたあの頃は一番安い「もり」ばかりを食べていたが、数年経った今はお金を気にせず注文できる。成長した私はちくわ天うどんにランクアップし、更にはミニかき揚げ丼を追加するまでに成長した。
合わせて1000円足らずのかわいいランチなのだが、かつての記憶がなんだか贅沢気分にさせる。高いものを食べるのとは別の、財布を気にせず食べたいものを注文できる幸せ。料理を運ぶおぼんが重くなった。
食べて思い出すあの頃の味。手打ち麺の力強いコシと、いびつな太さの愛おしさ。ちくわ天の衣は粗くてガリっとした食感がワイルドで好き。ほうれん草は一番安い「もり」にも入っていた付き合いの長い相棒。求めていた味、おいしい田舎の味。
都内に行けば美味しいお店はいくらでもあると思う。ただ、高校時代を共にした情緒的な価値を超えることはできない。一口ごとにあの頃の記憶を思い出しながら食べていた。
初めて頼んだセットのミニかき揚げ丼。330円ではあるが、メインを頼んだ人にしか食す権利が与えられない贅沢品。どっぷりタレに浸かったかき揚げはしっかりと味覚を刺激して、あっさりしたうどんに華やかさを足す。これも美味しい。常にお腹を空かせていた若き日の自分にも食べさせてあげたかった。
最近は都内にばかり足を運び、地元やお世話になった味への敬意を忘れていたみたいだ。口福は灯台下暗し、こんな近くにあった。
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