『密輸 1970』は超楽しい!ゴキゲンでやんちゃな奴!【映画感想】
あらすじ
レビュー
TBSラジオ『アフター6ジャンクション2』の人気コーナー【週間映画時評 ムービーウォッチメン】課題映画になったので感想メールを送りました。このレビューはそのメールの全文です。
以下、作品の内容に触れています。あまり事前情報を入れずに映画を鑑賞したい方は映画鑑賞後にご一読くださいませ。
映画って超楽しいジャン!!
『密輸 1970』見てきました。
今年見た韓国映画のなかではベスト級の1本でした。恥ずかしながらリュ・スンワン監督作品は今回が初体験でしたが、映画本来の愉しみ方を教えてくれるナイスな一本でした。
もし人に例えるなら「やんちゃ」な映画
韓国映画なのに「昭和歌謡みたいな選曲が染みるなあ」とエモい気持ちなったり、「だまし合い」が重要なのかと思っていたらシンプルに「暴力」で物事が解決したり、エンタメ映画ならではの野蛮な面白さをこれでもかと詰め込まれた作品でした。最近私が見た韓国映画は暗澹たる気持ちで劇場を去るタイプのものがたまたま多かったので、今作のような元気がでる映画が見られて本当に良かったです。
あのシーンが良かったよねぇ~!と一緒に見た仲間と語り合えるような、やんちゃなエンタメ映画として特大ホームランでした!(ちなみに私の好きなシーンはドクがガラスのコップを口で割るところですね。『アシュラ』の主人公(※)かよ!と心の中でツッコんでしまいました)
※ご参考までに当該映像が見られる予告編を貼っておきます。韓国では激怒表現として「コップをボリボリ」は定番なのでしょうか・・・。
エンタメを成立させる抜群のバランス感覚
サービス精神満載の映画ですが、70年代の韓国が日本やアメリカに対して抱いていた距離感や、都市と地方の格差、ジェンダーギャップなど社会性を取り扱った作品でもあります。
シフターフッド、コンゲーム、近接格闘アクション、70年代風味のファッションや音楽など、かなり要素がてんこ盛りですが、要素と要素を自然につなぎ合わせるバランス感覚が優れている監督だと思いました。
なお私が一番推したいのは水中でのアクションシーンです。ウニで「そんな伏線回収するの!?」とか、「ここでジョーズがでてくるの!?」とか、酸素ボンベを持っている男たちの倒し方で「そう来たか!」とか、フレッシュなアイデアが出てくるたびに劇中の人物さながら「オーライ!!」と心の中で叫びながらサムズアップをしていました。
韓国映画がどんな歴史を辿ってきたか不勉強でよくわかってはいませんが、きっと70年代にはこんな映画がたくさん見られたんだろうなと思い馳せることができました。「2020年代の70年代映画」として仕上げて見せた、まさにタランティーノがこれまでやってきた「こういう映画はこういう楽しみ方をするものだよ」を教えてくれた一本でした。
宇多丸さんがリュ・スンワン監督は面白い映画しか作らないと言っていたので、次はとりあえず『ベテラン』を見てみようかなと思います!!
※あとがき※
宇多丸さんの評論を聴きました。リスナーメールとして読まれることを前提に書いている、という言い訳があるとはいえ、水中アクションについての自分の説明がショボすぎて恥ずかしいですな。
水中アクションのなにが凄いのかを『007』を丁寧に引用しつつロジカルに説明しているあたり、さすがは宇多丸師匠といったところですのでぜひ評論を聴いてください。
「映画って超楽しいよね」という感覚になり、最終的に「そもそもエンタメ映画ってなんなのさ」というところまで思索にふけってしまう感覚は、S・S・ラージャマウリ監督の『バーフバリ』を観たときの衝撃に近いかもしれません。
しかしあれほどスパイシーな刺激がある映画も奇跡なので『バーフバリ』と『密輸 1970』が同じだと言いたいわけではございません。
「過激なバイオレンス」や「タブーに切り込む社会性」みたいなものがないと「面白い映画」と思えなくなっているとき、本作のようなプリミティブな映画の面白さを見せられると「すげえ!!」ってなって興奮しちゃうんですけど、伝わりますかね?
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?