【映画】『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』はセリフがいちいち頭よさげで、くだらなくて、そして深イイ
あらすじ
レビュー
TBSラジオ『アフター6ジャンクション2』の人気コーナー【週間映画時評 ムービーウォッチメン】課題映画になったので感想メールを送りました。このレビューはそのメールの全文です。
以下、作品の内容に触れています。あまり事前情報を入れずに映画を鑑賞したい方は映画鑑賞後にご一読くださいませ。
凝り固まった心がほどける優しい映画
『ホールドオーバーズ』見てきました。
凝り固まった心がほどけていく様子を丁寧に見つめる、至福の133分でした。
私は映画によくある「インテリがインテリにしかよくわからないジョークを放っているシーン」が好きで、しかもよく聞いてみると哲学者の言葉を引用しながら「どうやら言いたいことはすごくくだらない下ネタっぽいぞ?」とわからないなりに理解できた瞬間が大好きです。その点本作のハナム先生とアンガスの会話の面白さは今年見た映画の中でもピカイチでした。特にボストンの美術館での会話(※)は大好きですし、ハナム先生がラストで校長に言い放つ「〇〇癌」というパワーワードは「本年度ナンバーワン捨て台詞」ではないでしょうか。
(※追記:メール構成上、会話がくだらなくて好きだったとしていますが、宇多丸さんの評論にもあったとおりこの美術館での二人の会話本作の非常に重要なテーマにも触れている点でもあります。私もニヤニヤ笑いながら正直泣いてました)
会話の変化=他者への理解度の変化
この映画はホリデームービー、クリスマスムービーでもありますが、ロビン・ウィリアムズ主演の『いまを生きる』のように、若者の過酷な現実からの解放が描かれている映画でもあります。本作は『いまを生きる』との類似点が多いと思いますが、決定的に違うのはロビン・ウィリアムズ演じるキーティングが一貫して「生徒を導く」というスタンスなのに対し、ハナム先生は「生徒を導く一方で、教師も生徒に導かれる」という点にあると思います。
これをハナム先生とアンガスの会話のやりとりの変化で示しているところがこの作品の凄さだと思いました。序盤の追試を巡るやりとりはゼロイチ思考の問答で、なんというか「ひろゆきとひろゆきが会話しあっている」ような、お互いに賢いんだろうけど、、、なんだかなあ、、、という印象を受けました。
しかしささやかな会話の積み重ねによってお互いの心がほどけていく過程を丁寧に描き、お互いに「アントル・ヌー」を共有できる仲になり、そしてウェットになりすぎないお別れのシーンで綺麗に幕引きをする。
これを最高の映画といわずして何と言いましょうか?恥ずかしながらアレクサンダー・ペイン監督作品は初めてだったのですが過去作も遡って味わい尽くしたいです。しかし何より本作は、クリスマスが近づくと絶対に思い出す映画のひとつになりました。最高です!
※あとがき※
この映画を見た週はなかなか忙しく、スピード重視で書いた感じが文面からも読み返してみて伝わってきますねぇ。分量も少ないし。
ただ早く書かなきゃと焦った結果、自分はこの映画の「セリフが好きなんだな」というのに早くたどり着けた気はします。
それと、この映画が「めちゃくちゃ人生に刺さる映画だった!」のは事実である一方「クスッと笑えて、ほっこりして、、、なんか普通にいい映画だったっす」という敷居の低さも魅力だと思うんです。だから重厚な評論はプロに任せてアマチュアはこれくらいの浅い感想でいいんじゃね?と開き直っています。
なお、アトロクの課題映画はなるべく見るし感想はメールすると決めているのですが、今週木曜日の課題映画『バッドボーイズ RIDE OR DIE』は過去作をまったく見ていないし、他に見たい映画ありすぎる&依然として仕事が立て込んでいるので見ないことにしました。すまない!バッドボーイズ&アトロクスタッフの皆様。
忙しいと言いつつ映画はなんかしら見ているので、今度は課題映画以外のレビューを書いてみようと思います。