
読書感想文『アーモンド入りチョコレートのワルツ』
この本は3つの話が入っている。
「子供は眠る/ロベルト・シューマン〈子供の情景より〉」
「彼女のアリア/J.Sバッハ〈ゴルドベルグ変奏曲より〉」
「アーモンド入りチョコレートのワルツ/エリック・サティ〈童話音楽の献立表より〉」
個人的に割と思い入れのある曲たちが話の中に登場するので、僕は時々、ピアノを聴きながら読んだ。
もちろん、作品中に出てくる曲も聴いた。
初めの話は、いとこ同士が集まる夏休みの話。
子供の情景は僕もピアノのレッスンで何曲がやった曲だ。
トロイメライや見知らぬ国と人々については聞いた事がある人も多いのではないかと思って彼女にも弾いて聴いてもらった事がある。
でも、知ってたのはトロイメライだけだったな。
シューマンの子供の情景から曲を選んで弾いたのも夏だったと思う。
お盆のお墓参りや掃除をしに別荘に行くので、あまり連絡が取れなくなって彼女が寂しい思いをしないようにと、ピアノを弾いて録音しておいたのだ。
これが、本の中の夏にいとこ同士が別荘で集まり夜になると子供の情景を無理矢理に聞かされるというストーリーと微妙に重なって、読みながら自分の夏の思い出を思い出していた。
この話に出てくる章くんは、ピアノが好きだ。
弾く方では無くて、たぶん、聴く方だけだと思うけど。
「ピアノの音色は人の心の足りないところを埋めてくれる」
という言葉が出てくる。
これを祖母に言われて章くんは、クラシックピアノを聴き続け、そのうちにピアノに取り憑かれてしまう。
聴く人の心の足りないところを埋められる様な演奏が出来たらいいな、と思った。
その事が、僕がピアノを弾く理由になるのかな、とか考えていた。
次の話はゴルドベルグ変奏曲が出てくる。
不眠症の男子と嘘つきな女子の話。
ゴルドベルグ変奏曲はバッハが不眠症に悩む伯爵が眠れない夜を慰める曲を!と作曲してもらったのだとか。
僕も夜、眠るのが得意では無い。
不眠症の様に病的に眠れないのではなく、夜が好きだからという理由が1番な気がする。
元々眠りにつくまでに時間がかかるタイプだし、眠る前ほど嫌な事や余計な事を思い出してはもやもやしてしまう。
1曲目のアリアは静かな曲で確かに眠れない夜に聴くのには良いかもしれない。
アリアは夜に寝る前に弾いてたら気持ちも穏やかになりそう。
読書感想文なのに読み終えてから時間が経っていて話がぼんやりしてしまっていて、読んだ時に僕が思った事を書いているだけになってしまっている。
これでいいんだっけ?読書感想文の正解ってなんだろう?
最後の話が本のタイトルでもある「アーモンド入りチョコレートのワルツ」だ。
ちょっと風変わりなピアノの先生と女の子の話。
エリック・サティの曲は何曲も弾いたけど、この曲の入っている「童話音楽の献立表」を弾いたことが無かった。
聴いてみると可愛らしい曲が多く、ストーリーも会って子供の時にやってたら楽しそうだなと思った。
この話は、少し羨ましいと思う事が多かった。
友達と同じ時間に自由な感じでピアノのレッスンを受けたり、友達の方はピアノのレッスンだと言うのに苦手だからと歌を歌っていたり。
僕は誰かとレッスンした経験がすごく少ない。
連弾をしたのも数えるくらい。
1番最近だとバイオリニストと一緒に弾かせてもらった。
この方がとても上手で、目線を合わせたりで僕が弾きやすいようにしてくれていた。
YouTubeとかで連弾やセッションしてる人を見るとすごいなぁと思うばかりなので、この時はすごく上手くいって嬉しかったのを覚えている。
なので、友達や先生以外の人と練習をすることが僕には非日常で楽しそうに見えた。
木曜日のレッスンのあとのワルツで踊る時間もそう。
中学生の時にそんな非日常的な空間があるなんて特別な時間だと思う。
この話に出てくる非日常を、終わらせたくないけど終わりが近づいてくるのを感じがなんとも言えず、切ない。
サティのおじさんが別れの時に「アーモンド入りチョコレートのように生きていきなさい」と言う。
別れの文句に似ていると気づいたとあったけど、どういう事だろう?
芯がある人になりなさい?
そんな別れの文句……言うかな?
きちんとした正解を理解出来てない気がするけど、良い成長を願うのは……あるか?
サティのおじさんは、良いキャラだった。
風のように現れて、嵐を巻き起こして、風のように去っていく。
そんな出会いが僕にもあるといいな。
胸の奥の優しい心をきゅんとさせるとさせる物語と背表紙のあらすじに書いてあったけど、うん、そんな感じだ。
と、読み終えた後に思っていた。