エピローグにはまだ早い《日記》
連休最終日。
体調が最悪。いよいよヤバいのかも?なんて思いながら僕はぼーっとしていて周りはなんとなくバタついていた。
頭がぼんやりしてて時間感覚が無くて大体しか覚えてない。
とりあえず、だるい。
夕方?家族が呼ばれる。
部屋の引越しをするかどうかの話をしてる。父親が真顔だなあとか、兄弟がやたら撫でるなあとか、そんなことは覚えてるのに肝心の先生の説明は衝撃的な言葉に他は記憶から消えた。
あー、おれ、死ぬかもなのか。
死ぬことについて、しんどさと霧がかかった頭で考えた。
今さらな後悔がどんどん湧いてくる。
何が正解か不正解かなんてわからないけど、自分の選択ミスで今死ぬの嫌だな、とか。
恋人に会いたかったな、とか。
親孝行、祖父母孝行全然して無いな、とか。
夕飯は食べられなかったけど、死にたくなくてゼリー食べて。
もしも、死ぬなら恋人にそういう状況だって言わなきゃな。声も聞きたいし。
すぐ電話してくれたけど『死ぬかも』なんて中々言い出せない。
言葉にしたら現実になりそうで、怖くて言えない。
そしたら、言葉より先に涙が出てきて、彼女は良くない話があるんだと察して、それでも聞くよ、と。
死ぬかもの話の前に死にたくないが出てくる。
本当に上手く話せない。何度も何度も、言葉を飲み込んで。
こういう時、穏やかじゃいられないことに自分の小ささを感じるし、やりたいことのためにどうするか考えてた矢先にこんな風になるのは、到底納得出来なかった。
RADWIMPSのうるうびとの歌詞みたく、全人類から10分寿命を貰いとかわがままに願ってしまうくらいに死にたくなかった。
なんとかかんとか、今の状況を話して、ちゃんと死ぬかもってお知らせして。
言ってしまったら、身勝手にも少しだけ安堵してしまった。彼女の声の安心感。おしゃべりをしてなくても繋がっている安心感。あんなに眠るのが怖かったのに、不思議と安心して眠ってしまった。
目覚めるか、明日の朝、普通に起きるかも解らないのに。
君より先に死なないっていう約束を破るかもしれないのに。
朝が来るまで、何度も起きたと思う。
目が覚める度に看護師さんがそこにいて、看護師さんとと目が合い、あー、良かった生きてる。そう思ってまた寝た。
朝になって、部屋を移動した。
連休で、人が少なかったのに僕は迷惑かけてるなあ……とか思ってた。昨日、移動しても良かったんだろうけど、家族と会ったり、僕が大切な人に電話する時間くれたり、猶予をくれていたのかなと今は思う。
そうして、今日。
相変わらず、体調は悪い。でも、昨日よりマシな気がする。安静だし、様相は重病人だし(重病人ではあるんだけど)この日記書くのも1日かかったし。
それでも、生きてる。もう大丈夫って言われたわけじゃないし、これからしばらく安静だから彼女と電話もあんまり出来ないけど、なんにも出来ない、なんにもしないを頑張って、少しでも日常を取り戻せますようにと願う。
書きながらも、何度も何度も色んなことを後悔しては色んなことを思い出した。
こうならないようにもっとわがままに生きても良かったのかな。いや、単純にまだ生きた時間が足りてないのか。
少しづつ、メンタルは落ち着いた様な……いや、全然だけど。
とりあえず、生きてる。
もっと、生きたいなあ。
せめて、彼女が旅立つのを見送るくらいに。