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養殖サーモン(鮭)は自然にピンク色にならない。サーモンと環境問題の話。

サーモンって美味しいですよね。油がのっていて柔らかい。生で美味しく、焼いて美味しく、洋食にも和食にも合う。サーモンが好まれているのは日本だけでなく米国やヨーロッパでも非常に愛されている魚です。
肉と違って魚なので何となく健康にも環境にも罪悪感なく食べてしまいます。
しかし、養殖サーモンは中々色々なことを考えさせてくれる食べ物です。現在、天然のサーモンの漁獲量が頭打ちになるのに対して養殖のサーモンの生産量は年々増加しています。このため現在世界で流通しているサーモンの2/3以上が養殖のサーモンと考えられます1) 。今日は養殖サーモンと環境問題についてあまり知られていない事実を書きます。

サーモンを普通に養殖すると身はピンクにならない

環境問題としては本質的ではないですが、ショッキングな事実を書きます。天然サーモンがピンク色をしているのはエビやカニ、オキアミなどを食べてその色素(アスタキサンチン)が身に移るためです。しかし、養殖のサーモンはイワシやニシン、トウモロコシや大豆などで育てられています。このため、普通は身が白くなります。身が白いサーモンだと誰も買わないので養殖業者は色素(アスタキサンチン)を餌に混ぜてわざと身をピンク色にしています。
アスタキサンチンは藻から抽出されており、工業的に生産されていますが天然由来であり石油由来ではありませんので少し安心(?)です。しかし、複雑な構造を持ったアスタキサンチンは非常に高価であり養殖サーモンの餌代の約20%がアスタキサンチンであると言われています2) 。身をピンクにするのにコストかけ過ぎな気もします。
ちなみにアスタキサンチンは高い抗酸化作用を持ち、紫外線や脂質過酸化反応から生体を防御する因子として働いていると考えられており、化粧品などにも入っています。

サーモン養殖の環境負荷

①飼料要求率と餌の中身
これがほぼすべてと言っていいですが、サーモンの肉を1kg得るには2~4kgの野生の「魚」が必要です。牛、豚、鳥を育てるのにも多くの餌が必要ですが、その餌は全て植物で賄うことができます。しかし、サーモンを育てるのには野生の魚が必要です。しかも得られるサーモンの肉よりも多くの魚が要ります。世界の漁獲量は持続可能な数量ではないと言われているにも関わらずです。
養殖というと海苔や貝の養殖のように自然に育ち、まるで限りある資源を乱獲せずに持続可能に育てている気分がしてしまいます。しかし、サーモン(やマグロなどの場合)実際はその逆です。確かにサーモン(やマグロなど)を乱獲はしませんが、これら同様に限りある天然の魚を通常の漁業よりも多く消費しているのが現状です。
カーボンフットプリント等から考えられる環境負荷は牛肉>豚肉>養殖サーモン>鶏肉になりますが、他の動物の肉とは異質の問題を抱えているのが養殖サーモンです。
このため、魚ではなく穀物やアミノ酸など植物性の餌でサーモンを育てる取り組みもされています。しかし、植物性の餌で育てたサーモンではオメガ3が減ってしまうという問題があります。オメガ3は魚に含まれる身体に良い油です。魚を餌にして育てるとオメガ3が豊富に含まれますが、植物性の餌でサーモンを育てると肉の様にオメガ3が少ない身になってしまいます。

サーモン養殖の環境負荷②海の環境破壊と生態系への影響
サーモンの餌の残りや糞は海の富栄養化をもたらし、近隣の生態系に悪影響を与えます。また、養殖場の中ではサーモンは自然よりも密に飼われているためしばしば病気が発生します。病気が養殖場に留まるのならよいのですが、養殖場だけでなく天然のサーモンにも伝染します。
世界で2番目にサーモンが生産されているのはチリ3) ですが、南半球のチリの海や川に元々サーモンは居ませんでした。もちろんこのような現象は他の動物でも見られます。オーストラリアには世界で3番目に羊が居ますが、羊はオーストラリア大陸の在来種ではありません。魚でこれほど大量に外来種が育てられている例もあまりないのでこれが今後どのような影響があるかはまだよく分かりません。

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地球に優しく魚を楽しむには

量を減らそう
養殖サーモンを100g食べるときと200g食べるときと比べて、200gの時に満足は倍になりますか?健康のためにも一回に食べる量を減らしましょう。
また、毎日養殖サーモンを食べる食事と週に1回養殖サーモンを食べる食事のどちらが幸せでしょうか。ある程度の「不足」と上手に付き合うことは人生を幸福にするためのカギだと思います。

イワシやニシンも楽しもう
サーモンの餌にされてしまう鰯や鰊ですが、これらも十分に美味です。また、これら身体に良いとされるオメガ3を大量に含んでいます。

最後まで読んで頂きありがとうございます。

1) https://www.maruha-.co.jp/salmon/fishery/10.html

2) https://www.treehugger.com/farmed-salmon-isnt-naturally-pink-or-red-4855231

3) https://www.globalnote.jp/post-7023.html



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