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創作小説・神崎直哉の長い1日 第13話 保健室登校の甘美な誘い③ー赤ちゃんできちゃう②ー

*この作品のオリジナル版は2006年に執筆されたものです。

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「マジで!?凛ちゃんご懐妊?」

 凛のひと言に万年低血圧ぽい、この保険医もさすがに驚かされたようだった。

「んなわけないだろ……」

「凛ちゃ~ん? 誰の子?」

 おいおい俺の発言は無視かい。

「……なぉやの……」

 ていうか凛も何いってやがる!

「やるね~あんたもなかなか~! パパおめでとう!」

 ノリいいなこの人!

「いや俺に思い当たる節はないし……」

「ひどい! ちゃんと認知してあげなさいよ~! 人でなしぃ~!」

「シクシク……」

 ていうかなぜ泣き始める凛は……。

「かわいそうに、凛ちゃん泣いてるじゃない~」

「だから俺は何もしてないって!」

「あら~。確かにそう言い切れる~? 寝てる間に無意識にやっちゃったとかあるかもよ~?」

 ……寝てる間に? ほとんどホラーな現象だが、思わずいろいろ考えてしまった。

「いや、今はともかく凛を治療してくれよ」

 話し込んでないで、調べたほうが手っ取り早いじゃないか………。

「確かにそうねぇ~。凛ちゃんお腹の具合はど~う?」

「……ちょっと痛い………」

「あら~!お腹の中で赤ちゃんが暴れてるのねぇ~!」

 
 んなわけあるかよ。

「つうか、いい加減マジメにやってくれよ……」

「はいはいわかりました~、ノリ悪いわね~」

 あんたが良すぎるんだよ!

「凛ちゃ~ん、昨日の夜から何食べたか教えてくれる~?」

 おっ、やっとまともに保険医らしい事してるな。

「……カレぇー、……お味噌汁ぅ、……餃子ぁ、……ピザぁ…………」


 どんな夕食なんだよ。美樹原家は……。和洋中ごちゃ混ぜですか!


「うんうん次は~」

 普通に対応してるし、この保険医さんも……。

「……プリンぅ、……ケーキぃ、……シュークリームぅ、……バナナぁ」

 食いすぎだよ!

「それまでが昨日の分ねぇ~、で今日は~?」

「…なぉやの家で食べたぁ~トーストと~コーヒーぃ……」

「それで終わり? 今4限目だからお昼はまだ……と、う~んこれだけだったら特に問題はないわよねぇ~」

 いや十分問題あるがな。

「凛ちゃん何か隠してな~い? ちょっとごめんね~!」

 そう言って保険医は凛の体をまさぐりはじめた。凛も病人だけあって、無抵抗のマグロ状態だ。

「……ぁうっ、……くすぐったいよ~」

 
 何やら危険な展開になってる気もする。


「……っ! 発見っ! これね~奇病の原因は……」

 保険医が凛のスカートの内ポケットから、なにかを取り出した。なんだかわからんが、事件解決の糸口を掴んだらしい。

「なになに……やっちゃんイカ20円、 え~賞味期限は……今から三年前となっておりま~す!」

 ツッコミ所が多すぎるぞ!

 授業中に駄菓子食うな!

 食い終わった後のゴミをなぜに、わざわざスカートの内ポケットに大事にしまっとく!

 賞味期限3年前のモノを食うな!

 あと保険医、最後のひと事が『サ〇エでございま~す!』調!

 ……疲れた。




 ――数十分後。凛は保険医に下剤をもらって、今はトイレで頑張ってる。まったく、人騒がせなヤツだ。しかし、この保険医も4限目の今時分まで、どこをほっつき歩いてたんだか……、凛をただ待っているのも暇なんで聞いてみる。

「あ~ん? 今までどこ行ってたかって? ああパチスロだよ~」

「おいちょっと待て」


 ありなのかそれは。


「いや~今日はイベント日でね~! 早朝から並んで行ったさ~! ……結局負けたけどね」

 そりゃそうだろう。

「……あんたとんでもない保険医だな」

 ていうかマジでよくクビにならないよな……。

「あんたとは失礼ね~、あたしには喜多原夕果という立派な名前があんのよ~」

「はあ、そうすか……」

「それにぃ、ただの保険医なだけじゃなくて~、スクールカウンセラーもやってんのよ~」

 こんなのがカウンセリングして大丈夫なのか……。

「そうだ! あんたも待ってるついでにカウンセリングしてあげようか!?」

 そう言いつつ、ベッドに腰掛けている俺に迫るように近付いてくる。


 やばいカユくなってくる。

「うふっ。おねーさんとイイことするぅ~?」


「ちょ待っ!」

 そんなふざけた事を言いつつ、保険医が俺に抱きついてくる。

 もう限界だった。


 俺は気を失った。


 これが俺と喜多原先生の最初の出会いだった。

 ―凛面白エピソード②妊娠疑惑編完―



「そういえばあんたと初めて会ったとき、まさかあんな事になるとは思わなかったなー」

 本日、俺が保健室に来てから、20本目となるタバコの煙を吐き出す喜多原。

「いきなり抱きつくなんて、冗談にもほどがあるんだよ」

 そんな話をしてる中、携帯の着信音が鳴った。

「……メール。……天堂からか」

そうか次の三限目は体育だったな……。

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