創作小説・神崎直哉の長い1日 第2話 加齢臭かく語りき
第2話 加齢臭かく語りき
「どう?」
眼前の加齢臭漂う男が、自信ありげにのたまった。
さすがオレと言わんばかりの表情をしていた。
全くもって腹の立つドヤ顔である。
だから俺は言ってやった。
「くそつまんね~」
「アウチ!」
外人ですかおのれは。
「どこがつまらないのよ~?マイ、ジュニア!?」
「全てがつまらん。設定が古臭い。しかもどっかで見たことあるし。セリフもおかしい。展開も意味不明だし、エロシーンもふざけてるとしか思えん」
「チビシー!!」
おっさん、かわいいと思ってるだろ。
そのリアクション。
「まともなのは挿し絵だけだな」
「担当さんが見付けてきたのよ。その子」
「ふーん。今までさっぱりだった売り上げがこの人の挿し絵になった途端に急激に増えたもんな」
「まだ若い女の子らしいよ~」
加齢臭が吐き気をもよおすような笑顔で言った。
俺は思わず挿し絵を凝視してしまった。
いわゆる今流行りの萌え系のイラストだったが、その描写はあまりにもハードコアだった。線の細い可愛い女の子の裸体に、筋肉質な全裸の男が覆い被さっている。その股間部分は、修正が施されてはいるものの、そこだけが異常なくらいにリアルに描写されている。
「この絵を若い女の子が……?」
俺はこの手のイラストは、毎日メガ盛りのチーズ牛丼を貪り食っているようなアキバ系のムサい男が描くものだと思っていた。
「そうよ~。まだ10代だって♪」
「……!…水飲んでくる」
俺は気分が悪くなり、台所まで水を飲みに行った。
「しょうがないわね~♪直哉クンの持病が発病しちゃったかな?」
背中越しに加齢臭の呟きが聞こえた。
つい想像してしまったのだ。
俺と同年代の女が加齢臭の小説の猥褻なイラストを描いている姿を。
「ホントどうにかならないかしらね~♪直哉クンの女性恐怖症♪」
つまりは、
まあ、そういう事だった。
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