創作小説・神崎直哉の長い1日 第4話 幼馴染①ースカートを履いた少年ー
「なぉや~っ!!起きてよ~っ!!」
カン高い声が頭の中に響いた。
「起きてよ~っ!!」
眠い。まだ寝たい。
無視した。
「…ちょっ、起きなさ~いっ!!」
ワンパターンな起こし方だった。
なんかこう、エキセントリックな起こし方はないものか。
「起きてよ~!もう~!学校に遅刻しちゃうよ~っ!」
まだ余裕はある。ギリギリまで寝たい。
俺は寝たフリを続ける。
ふいに、さっきまでのやかましい騒音が無くなる。
「ねぇ、なぉや~?本当に寝てる?」
つんつん
つん
俺の側にいるであろう騒音発生装置が、俺の頬を指でつついた。
こそばゆいが我慢する。
「ホントに寝てるんだね……。じゃぁ…」
騒音発生装置が何やら思案しているようだった。
何を企んでるのか知らないが、返り討ちにしてくれるわ!
数十秒の思案を経て決心したのか、騒音発生装置が動いた。
ちなみに空気の流れで俺は判断しているのだ。
音が聞こえた。
鼓動。
騒音発生装置の心の臓の音だった。
嫌な予感がした。
目の前に何かが近寄ってくる感覚が確かにあった。
ちょっと待て!
「勘弁しろよ凛!冗談にもほどがあるぜ」
俺は騒音発生装置に向かって言った。
目の前にいるのは、小柄なショートカットの少年。
白い歯が眩しい、いかにもスポーツ大好きです!といった健康的なナイスボーイ。
美樹原 凛 。
10年前に俺の家の近所に引っ越して来て以来の幼なじみだった。
「もう~起きてるなら言ってょ~!ビックリしたよ~っ!!」
凛が俺に抗議する。
「ていうか俺の方がビックリしたわい!なんだあれ!?俺にキスでもしようとしたのか!?」
男同士だぞ?
「ちがちがちがちがうよっ!!ち…」
凛の顔がまた赤くなる。
「ばか―――――っ!!」
少年は腕をガキみたいにブンブンと振り回しつつ、俺の部屋から出ていった。
どういうわけか少年は女物の制服を着ていた。
しかもむやみにスカート丈が短いので、いまなんか見たくもないのに白い物が見えてしまった。
俺への嫌がらせなのだろうか。
なんにせよ、凛が俺の部屋から出て行ってくれた事は都合がよかった。
俺も制服に着替えなくてはいけなかった。
もちろん男物の制服だ。
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