創作小説・神崎直哉の長い1日 第9話 校門前の攻防①ーチョコボール向井編ー
※この作品のオリジナル版は2006年に執筆されたものです。一部、過激な表現が出てきますがご了承ください。
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「あれ~なんか盛り上がってるみたいだけど、なんかあったの?」
何も知らない凛が、のん気に俺に尋ねる。
「ああ。北朝鮮のミサイルがその辺に落っこちたらしいぞ」
腕を掻きながら、適当に答える。
さっき天堂にされた事で、体中がかゆくてしかたない。
女に近づかれると湿疹がでるこの特異体質、なんとかならないものか。
「ミサイル~!? せ、戦争なの~っ!? こ、コワいよ~!」
凛が毎度のごとく泣きわめいてたが、それどころではないほどかゆいのだ。
「戦争になったら、プリンもシュークリームも食べられなくなっちゃう~!?」
「フッ、だいじょうぶよ凛ちゃん。敵が来ても神崎君が守ってくれるって」
ワケのわからない方向に困惑する凛を、天堂が落ち着かせようとしていた。さすがに気が利いている。
「神崎君なら弾道ミサイルでもオートボウガンで撃ち落とせるから安心よ!」
ちょっと待て。俺はサイヤ人かなんかなのか天堂よ?
ていうか、元はといえば天堂のせいで騒ぎになってるんじゃないか……。
非難の視線を天堂に送ってやる。
「ねえ、あれ……校門前の様子が変よ」
俺の視線に気付いた天堂が、目線を校門前に送る。
校門前に人だかりが出来ている。
「チョコボール向井じゃないか!」
「フッ、よく見えるのね」
「金のエンゼルって本当にあるのかな~。わたし見てみたいよ」
知るかそんなの。凛はこんなんばっかだなしかし。
「チョコボールがいるとなると……。まずいな、校門チェックかよ」
校門チェックとは、不定期に行われる制服検査や持ち物検査の事だ。
もちろん生徒たちへの事前連絡なしである。
「肛門チェックじゃなくてよかったわよね。フッ、私はそっちの方でも全然問題ないけどね」
「よかったね」
俺以外に聞こえないからといって、天堂がとんでもない事を言っているが軽く流す。いつもの事だし。
「しかしチョコボールはどこの日サロに行ってんだろうか。気持ち悪いくらい焼けてるぞ」
「たくましくていいじゃない」
さっきからチョコボールチョコボールと連発してるが、校門前にいる男は日本一有名なAV男優チョコボール向井本人である。
嘘だが。
チョコボールは体育教師で俺たちの学年、二年の学年主任。
どれだけ本人に似ているかというと、高校入学して最初のクラス内の話題が『やべえ! チョコボールがいる!!』に終始したぐらいである。
本当に瓜二つなのである。
ちなみにチョコボールの本名は伊集院ミチル。
少年時代は女の子に間違われるほど華奢な体系だったらしい。
チョコボールはそれが嫌で必死に筋トレしたらしいが……。
頑張りすぎだよ。
ちなみにチョコボール向井ことミチル君は、意外にも少女マンガ好きで、今ハマってるのは『ハチミツとクローバー』だとか。
そんなチョコボールに服装検査やら何やらされるわけだ。
朝から滅入るな……。
「今日はバイブ持ってこなくて良かったわ。ローターなら膣内[なか]に入ってるけどね」
冗談のように言ってるが、たぶん本当に入ってるから天堂梓は恐ろしい。
とはいえ、天堂は校門チェックなんていつも顔パスしてるのだが。
人徳ってやつだ。
本当の顔を知ったら、みんなどう思うことやら。
「さて行くか~。めんどいけど」
まあ、特にヘンなモノも持ってきてないし大丈夫だろ。
さて、校門前に来たわけだが。
さすがにチョコボール一人だけじゃなく、風紀委員が何人かいるみたいだ。
列がいくつかある中、俺たちは適当に並ぶ。
ちなみに俺、凛、天堂それぞれ別の列にした。
凛、制服検査で『男子は男子の制服を着てきてください』とか言われると面白いんだけどな(ヒドい)。
次々と周りの列の人間が消化されていく中、俺の列はなかなか人が減らない。
なんか俺の列担当の風紀委員、やたらトロい奴なのかもしれないな。
気付いたら天堂はすでに校舎の中へと消えていた。
「マッスル! 美樹原~! おまえカバンの中お菓子だけしか入ってないじゃないか~! 教科書とかどうしたんだよ~」
「あう~。教科書とかノートは教室の机の中に…」
凛は本当に人気者だな。
「校則で教科書・ノートを学校に置いていく事は禁止されてるだろ~、だいたい予習・復習は……」
奇跡が起きた。なんとチョコボールが凛のカバンの中から、あるものを取り出したのだ。それは……。
チョコボールがチョコボール持ってるし!!
生徒たちは必死に笑いをこらえている。(チョコボール本人にチョコボールと言うのはタブーなのである)
凛もなかなかやるよな~
偶然チョコボールがカバンの中に入ってるなんて。
しかし、俺の列ホント人減らないんですけど。
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