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創作小説・神崎直哉の長い1日 第5話 幼馴染②ー始まりの公園ー



 俺は制服に着替える間、凛について考えていた。

 最近、どういうわけか凛は妙な行動をとる事が多くなった気がする。

 ふと、あいつに初めて合った時の事を思い出す。

 あれは俺が5歳の頃だったか。

 俺がいつも遊んでいた公園に、見知らぬ男の子がひとりポツンと佇んでいた。

 みんなの輪の中に入って行きたかったのだろうが、声を掛ける事ができず、オロオロとしていた。

 声を掛けようと、誰かに向かって近付いていくのだが、結局勇気が出ず、またフラフラと元いた場所に戻っていく。

 誰もあいつに声を掛けるヤツはいなかった。

 だから俺が声を掛けた。

「なあ、おまえ!いっしょに遊ばないか!」

「うん!」

 満面の笑顔で男の子が笑った。

 それからはいつも二人で遊んだ。

 凛という名の男の子は、俺の弟のような存在になっていった(年はタメだが)。

 小中学校と同じ学校に通い、なぜか高校まで同じ所を受験するのだった。

 まあ、凛は幼なじみというか家族のような存在だ。


 さて、そんな凛だが、小学校の時ある事件が起きた。

 当時の俺には凜に対してある疑問があった。

 で、本人に対して聞いてみた。
 
「なあ、おまえなんで体育んときいなくなるの?」

 季節は小五の夏だっただろうか。

 体育は高学年になると男女別に行っていたのだが、男子連中の中に凛がいない事を俺は不思議に思ったのだった。

 凛は俺の質問に答えず、ただ泣きじゃくるだけだった。



 そのとき初めて、

 俺は凛が女の子だったことを知ったのだ。



 泣きやんだ凛が俺に向かって言った言葉はこうだった。

「いままでみたいに、わたしの事、男の子と思っていいから友達でいて」

 すでに女性恐怖症だという事が、周りに知れ渡っている俺だった。

 一番の親友に離れられるのも嫌だった俺は、凛の要求を受け入れた。

 そうして、女性恐怖症の俺が唯一まともに接する事ができる女の子が出来たのである。

 めでたしめでたし。

 何か思い切り歪んでる気もするが。

 それからも俺と凛の二人は仲良くやってきた。

 だからそれでよかったんだろう。



 そんな事を考えつつ、制服に着替え終わった俺は一階のリビングへと降りていった。

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