創作小説・神崎直哉の長い1日 第1話 ときぬき萌えリアル
※この作品のオリジナル版は2006年に執筆されたものです。
最終章 伝説の樹の下で
卒業式を終えたオレは教室の机に戻ると、何か見慣れない物があるのを発見した。
「なんだ? これは……」
それは差出人不明の手紙だった。
『小波クンへ
今日の夜19時に
公園の伝説の樹の下で待ってます
あなたを想う者より』
「なんじゃこりゃ~っ!!」
オレは叫んだ。
教室中のみんなが一斉にオレの事をキチ〇イを見るような目で注目した。
「どうした万太郎? 何かあったのか?」
誰もが恐れをなして、オレに近寄らない中、唯一声を掛けた男がいた。
親友の友也だった。
別に友達だから友也と安易に名付けたのではない。
「やべえよ友也! 見てよこれ! 噂の卒リンってヤツだべ!? おまえも加勢しろ! 今夜は熱い夜になるぜ!?」
オレは果たし状がこの平成の世に届けられた事に驚愕していた。
「違うよ万太郎! これはラブレターだよ! やるな~卒業式の日に…ぶべらッ!!」
友也が言い終わる前に、オレは友也の顔を思い切りブン殴った。
意味はない。
ただ、単に殴りたかっただけだ。
「ちくしょ~! こうしちゃいられねえぜ!」
オレはダッシュで学校を後にした。
「あっ! 万太郎先輩! あたしあなたのデンジャラスな魅力にノックアウト寸前でした!!」
走るオレの前に可憐な女子の後輩がいた。
「だから先輩の第2ボタンを……」
「どわっしゃ~~~い!」
秘技!! 一本背負いなり!!
女といえども容赦しねえぜ!
その他、多数の誘惑があったが、オレは全て退けていった。
オレは目的の地に遂にたどり着いた。
薬局マツモトヒヨシは大型薬局チェーンである。
「うおおっ!! コンドーム! マムシドリンク!! ユンケル! バイアグラ! やってやる! 今夜は最高の夜にしてやるぜ!」
準備は完了だ。
さあかかってこい!
そして時間は運命の夜19時……
オレは例の公園に来ていた。
卒業式の日に、この公園の大木の下で告白をし、カップルが誕生すると、その二人は永遠に幸せになれるという。
新たな伝説が今生まれようとしている!
大木の下に一人の少女のシルエットがあった。
オレにはそれが誰だか確信があった。
家が隣同士の素直じゃない幼なじみ。
「さあ来てやったぞ! おまえなんだろ? 渕崎しほ……」
シルエットの少女が、振り返った。
「待ってたわーん♪万太郎クン♪あ・た・し・よジョイ子よ♪」
「チェーンジッ!!」
「ちょっとなによ万太郎クン!?そのブサイクなデリヘル嬢が来たときみたいなリアクションは!?失礼しちゃう!」
なぜ友也の妹のジョイ子がここにいる? 悪い冗談か?
ちなみにジョイ子は皆さんのご想像どおり、ドラ〇もんのジャイ子にそっくりです。
「おいそこの顔面放送禁止女!オレのしほりはどこに行ったよ?」
「まあ、顔面放送禁止女だって!酷いこというわよね~このひと!」
通りすがりの女子大生に絡むジョイ子だった。
「てめーだよジョイ子。視力いくつだよおまえ」
「両方とも2.0よ♪」
かわいそうなことに、頭のほうがおかしいらしかった。
「ちなみにしほりはお兄ちゃんとラブホに行くっていってたわーん♪ そんなことよりあたしとアツい夜を過ごしましょ♪」
こんな大木は燃えてしまえばいいと思った。
オレは狂乱するブサイク女を背に、公園を出た。
悲痛な決意を胸に。
一方その頃ラブホテル『gishian』では、友也としほりが互いの体を重ねている最中だった。
まさにいきり起ったオットセイくんが、アワビに向かって突入せんというところだった!
ふと部屋の入り口のドアが開く音がした。
オレは使い慣れた金属バットを手に、友也としほりの前に立っていた。
すでにここに来るまでに何人か、肩慣らしに始末していた。
全く何もかもおかしかった。
「おいいきなりなんだよ万太郎!?」
「そうよ万太郎!…ちょっ!なにそのバット!血がついてるじゃな………!!!」
一回 二回 三回 四回 五回 六回 七回 八回 九回 十回 ……
何回バットを振り下ろしたのだろうか。
気付いた時には、目の前に肉の塊が二つ転がっていた。
かつての親友と愛した女の哀れな末路だった。
たくさんの素晴らしい思い出をありがとう。
オレは泣いていた。
傍らに雑誌が転がっていた。
何となく人生相談のページが目についた。
『北方先生!人生に悩んでます!』
『ソープに行け!女を知れ!全てはそこから始まるんだ!』
そうかソープに行けばいいのか!
オレはいてもたってもいられなくなり、ソープランドへ向かうのだった。
その後、小波万太郎の姿を見た者は誰もいないという。
【完】
第2話に続きます
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