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タイムスリップ自分ログ 第6回 太宰治編

 なぜか意外とアクセス数が多いこのシリーズ、現在、文学鑑賞・夏目漱石がアクセス一位なんで、実験的に過去に太宰について書いた記事を取り上げてみます。今回は2007年の元旦にタイムスリップだ!

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07-01-01 17:32
[明けました]

 神がいるなら、出て来て下さい!
 太宰治『ヴィヨンの妻』より


 昨日今日と、太宰治の小説を読んでおりました。

 暗いな!しかし!

 いや結構、ユーモアあふれる文体で意外と笑えるんですが。

 外伝の煩悩文芸部(拙作『明青高校シリーズ』の外伝)の主人公ダサい先輩のモデルなんですが、企画始めた当初はろくに太宰作品を読んでなかったので、最近になって読んでます。

 やはり、今の自分のハチャメチャな状況と重なる事もあり、感情移入して読み込んでしまいます。

 昨日今日は、新潮文庫版短編集『ヴィヨンの妻』全作品や100円ショップダイソーで売ってるダイソー文庫(読みやすくて、オススメです)の『女生徒』を読みました。

 『ヴィヨンの妻』は家庭をテーマにした短編を集めた後期作品集。表題作『ヴィヨンの妻』は、後期短編の代表作とだけされるあって、面白い。

 すごい不幸な状況なんだが、妙に達観した女性の告白体で書かれるので、なんともいえない読後感があります。

 連続して掲載されている『父』と『母』は、内容が対象的。

 『父』は太宰の私小説的(太宰作品の大概は私小説的作品なのだが)、とにかく鬱々としている。

 「つまらんものを書いて、佳作だの何だのと、軽薄におだてられたいばかりに、身内の者の寿命をちぢめるとは、憎みても余りある極悪人ではないか。死ね!」と引用してみましたが、自虐にも程がありますね!

 逆に『母』はそのタイトルの意味が明かされる、ラストの展開に唸らされる名短編って感じですね。

 『親友交歓』はサービス精神溢れる文章センスを楽しみたい。

 『トカトントン』は、全編が手紙形式で綴られる作品。

 『家庭の幸福』、『桜桃』は軽妙な文体に救われてるものの、鬱系の作品。

 個人的には、『おさん』はシャレになりませんでした。

 自殺する男の動向を妻の側から語った作品なんだが、ホントにウチの親父とやることがそっくりです。

 やりきれない文末も、読んだ後、こちらが鬱状態になるほどです。

 で、その後『女生徒』を読んだんですが、中期の代表作とされてるだけあって、圧巻でした。

 小学生の時、一回読んだことあるんですが、そのときでは気付かなかった衝撃がありました。

 父を亡くし、姉が嫁ぎ、母親と二人暮らしの女子高生の独白が延々と続く作品なんですが、アイデンティティが芽生え始めた年代の心理描写が凄い!

 小説を書く人なら、この作品の凄さが理解できないと駄目でしょう。

 子供のように無邪気なだけではいられなくなった世代の内面が、巧みに表現されています。

 では、名フレーズの多い今作から、ラストを引用。

「おやすみなさい。私は、王子さまのいないシンデレラ姫。あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか?もう、ふたたびお目にかかれません。」

 う~む、ギャルゲーから文学まで、エロファミ(拙作『明青高校シリーズ』の旧名)は本当に守備範囲が広い!

 なんか正月だし、外に遊びに行ったり、ゲームでもやってバカ騒ぎしたいところなんですが、そこまでする気力がないのでした。

 精神的に疲れすぎました。

 作者の今の気分を、今回取り上げた『ヴィヨンの妻』から引用すると以下のような感じ。

「ああ、いかん。こわいんだ。こわいんだよ、僕は。こわい!助けてくれ!」

 大丈夫か!作者!

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この手抜き記事のアクセス数も高かったら、新規に太宰に関する記事を書きたいと思います。

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