昔は白米は贅沢品だった!?現代に潜む白米の皮肉
今回はいつもとは趣向を変えて少しコラムのようなものを書いてみたいと思います。 テーマは現代の玄米食にはびこる皮肉についてです。
昔は白米が高級品だった
江戸時代は白米が高級品でした。
そんな高級品の白米をたくさん食べられたのは江戸だけと言われています。地方は白米ではなく玄米にかさ増しのための雑穀を混ぜたものを食べていたそうです。
なぜかと言うと地方は年貢米として大量の米を取られるため、少ないながらの玄米に他の粟やひえなどの雑穀を混ぜて食べていたからです。
逆に江戸は毎年地方各地から 年貢米が届けられるためお米が大量にありました。また、江戸時代中期に中国から伝わった精米機の発達により精米が楽になり白米を食べるようになったと言われています。
当時の人からすると、白米をたくさん食べることは憧れでした。
江戸時代の求人には白米がたくさん食べられるということがセールスポイントになっていたくらいです。
そんな訳で毎年多くの人が地方から江戸に移り住みました。 ここ(江戸)には仕事もあるし白米もある。江戸は地方の人の憧れの土地だったというわけです。
逆に江戸の人は白米を食べる事を「粋(いき)」と感じていました。白米を食べるから江戸っ子江戸っ子だから白米を食べるというわけです。
白米と江戸患い
しかし江戸には原因不明の病気が蔓延していました。急に足元がおぼつかなくなったりふらふらするといった症状です。時には死亡する人も出ました。
現代だからこそ、この病気の病名や原因が分かっています。この病気は脚気です。
地方から江戸に移り住んだ人がこの原因不明の病に苦しみ、地方に帰ったらこの病気がケロッと治ってしまう。このようなことからこの病気は「江戸患い」と言われました。
生死を分けた陸軍と海軍の食事
実は脚気の原因がわかったのは明治時代のことです。脚気の原因は皆さんご存知のようにビタミンB1の不足です。
しかし、原因が発覚するまでは伝染病説や中毒節などなど様々な説が飛び交っていました。
当時陸軍の軍医であって文豪としても知られる森鴎外は「この脚気は伝染病であり、脚気菌なる菌が存在する」と唱えました。森鴎外はドイツ医学に精通しており、理論をまず重要視する当時のドイツ学派の鴎外は「伝染病説」を唱えたと言うわけです。
しかし、イギリス医学に精通した海軍軍医の高木兼寛(たかきかねひろ)は「脚気栄養不足説」を唱え、食事に麦飯や洋風のメニューを加えることで脚気の克服に成功しました。カレーを脚気予防として取り入れたことも有名です。今でも横須賀などの軍港では「海軍カレー」として残っています。
(ものすごく余談ですが、海軍では毎週金曜日がカレーです。これは毎日景色の代わり映えのしない海上に何日もいると曜日感覚が狂ってしまうから、毎週金曜日をカレーで固定することで「あ、今日は金曜日か！」と兵隊さんに気付かせる役目があると言われています。)
さて、話を脚気に戻しましょう。
このように陸軍と海軍で買って対策に違いが出た両者。
結果は一目瞭然でした。
海軍が乗組員333名のうち16名が脚気で脚気による死亡者なしという好成績なのに対し、陸軍は4万人を超える兵士が脚気にかかり、脚気による死亡者は4000人以上という散々たる結果でした。さらに戦争での戦死者970名に対して脚気による死亡者は4064名であり、戦争よりも脚気による死亡者の方が多いという結果です。まさに戦争ではなく脚気に負けたと言わざるを得ません。
江戸時代に江戸に移った人が勝手に日本に戻った瞬間それがケロッと治ってしまったというのも主食が白米から玄米に変わったことが原因なのは皆さんお気付きでしょう。
海軍軍医の高木兼寛が食事メニューの改良に走ったのが1884年。ビタミンB1の発見が1911年ですから、高木はビタミンB1の発見以前に脚気の克服に成功していたことになります。まさに、「根拠に基づく医療」の重要性を示したようなエピソードです。
玄米の皮肉
さて江戸時代の話からわかるように昔は白米は高級品でした。
しかし現代はどうでしょう。玄米の方が高級品ですよね。
これには3つの理由があるとされています。
一つは単に流通量が少ないからという問題。
もう一つは玄米に使用する米の方が高級品だからという理由です。玄米は食べた事がある方は分かるかと思いますが、白米よりもモサモサした感じで味は劣ります。そのためせめて味の弱点を克服するために玄米として販売されるお米は質の高いいわゆるちょっぴり高級品のお米が使われているのだそう。
他には精米しない分農薬を落とす機会が失われるため、出荷する際の農薬の付着を少しでも減らすために精米コストがかかっている、無農薬またはそれに近い育て方をしているからと言う理由もあるみたいです。
昔は玄米が貧乏人の食べ物で病気防いでいました。しかし、現代は白米の方が値段が安く、それが病気を招いているかもしれません。なんとも皮肉なことです。
参考↓