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クリスマスにあった惨劇 & プロが使っているたった一つの文章テク

クリスマスシーズンになると嫌な思い出が甦る。あれは忘れもしない23年前の12月24日。大学生活最後のクリスマスだというのに予定は全くの空白。アルバイトを終え一人寂しく帰路についたときのことだった。

凍てつく夜空の下で悲劇が起こる。

「あれ、鍵がない…。たぶんどこかに落としたんだ…。」
アパートの扉がこれほど憎らしく感じたことは未だかつてなかった。
22時過ぎの真冬の夜空の下、ひとり絶望を味わう。身寄りもいないし、ひとり暮らしの男性職員のもとに転がり込むわけにもいかない。これはヤバいことになった…。

アパートから出たわたしは、暖をとるために24時間営業のファミレスに駆け込んだ。ガタガタと震えるわたしを横目に、カップルがイチャイチャと語り合っているのに苛立つ。

コートとマフラーを椅子にかけると、この最悪のクリスマスをどう切り抜けるか思考を廻らした。オーダー待ちの店員に少し八つ当たり気味に「ドリンクバー!」とだけ伝え、ひとり蹲(うずくま)った。

目の前の温かいスープで手を暖めながら、携帯で頼れる人を探してみる。異国の地で知り合いがいるはずもなく、母国ほど治安が良いわけでもない。夜中に一人歩き回るなど自殺行為に近かった。

「鍵の110番ないのかな...。」
ネットサーフィンで探していると、とある記事が目に留まる。

ひとり暮らしの若い女性の部屋に、鍵職人の男性が押し入った。若い女性は殺害され犯人は逃亡中。

「ダメだ…。こんな深夜に無防備だ。別の方法を考えないと…。」
そうだ、事務所に戻って寝泊まりさせてもらおう。
急いで事務所の連絡先を検索する。

Prrrr....
「はい、○○です。」
「あ、よかった。じつは、鍵をなくしてしまって部屋に入れなくて困っていたんです。今からそちらに戻っても構いませんか?」
「それは別にいいけど、この時間帯に一人で歩いてると危ないよ。」
「そうですよね…。」
「いいよ。迎えに行くよ。どこにいるの?」

男性職員が到着すると、テーブル席の正面に座った。
「大変だったね。」
「こちらこそ、わざわざ迎えに来ていただいて申し訳ないです。」
「俺まだ食事とってないんだけど食べてもいいかな?一緒に付き合ってくれる?」
「もちろん構いませんよ。」

「一緒に食べよう。」
テーブルいっぱいに料理を並べた彼は、いっしょに食べるように誘ってくれました。
「いやいや、迎えに来てくれたのに食事までご馳走になるなんて悪いですよ。」
「じゃぁ、ひとりじゃ食べられないから手伝ってくれる?」

クリスマスだというのに財布の中には小銭がわずか。
部屋にあるパンを晩餐にする予定だったから、ドリンクバーのスープで済ませようとしていたのだ。
空腹で胃が痛むのが分かる。

ピザをひとかけら、ポテトフライを少し食べていると、彼が注文を追加したいと言い出した。

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