イギリス旅行記—雨の国、心の故郷―
イギリスに行くという決断をしたのは、
正直言うとかなり直感的だった。
特に計画的でもなく、ただなんとなく
「一度、あの街並みを見てみたい」
「あの霧のような空気を吸ってみたい」
と思ったからだった。
友達からは
「雨ばっかりじゃない?」と言われたが、
それもまたイギリスらしい魅力のひとつだ。
旅行の計画は簡単だった。
ロンドン、エジンバラ、
そして田舎の村を少し回るという
あっさりとしたもので
イギリスへの興味はどちらかと言うと
「景色」と「雰囲気」に傾いていた。
ロンドン — 「大きな街に小さな驚き」
ロンドンに着いた日の午後、
空は灰色で霧が立ち込めていた。
予想通りイギリスの空は
「映画で見るあの感じ」そのままだ。
タクシーでホテルに向かう途中、
古い建物が並ぶ街並みにわくわくした。
まず最初に訪れたのは「ビッグ・ベン」
観光地の定番だ。
実物を見てみると
その大きさに圧倒されるというよりも、
「静かな存在感」が心に染みた。
ビッグ・ベンの鐘の音を聞きながら
ただ静かに立っていると、
イギリスの風景が一枚一枚
絵画のように広がっていく。
その後、
ロンドン塔やバッキンガム宮殿を回ったが
一番印象に残ったのは
「テムズ川」と「ロンドン・アイ」だった。
ロンドン・アイの観覧車に乗った時、
下を見下ろすと
ロンドンの街が小さく見えると同時に
この街が何世紀にもわたって
培ってきた歴史と文化が一気に感じられ、
ただ「すごいな」と思った。
ロンドンを歩いていると
至るところに「歴史的な街角」が見つかる。
古い本屋さん
アンティークなカフェ
そして趣のあるパブ。
ある日ランチに入った小さなパブでは
まったく知らない人たちと相席になり、
いつの間にか話が盛り上がり
気づけばイギリスビールで乾杯をしていた。
イギリスの人々はフレンドリーで
地元の人々との会話が心地よい。
カジュアルに声をかけても
誰も警戒心を持たない。
むしろ、町のあちこちで
「気楽におしゃべりするのが日常」
みたいな空気が流れているのだ。
エジンバラ — 「小さな町、大きな歴史」
ロンドンを後にして次に向かったのは
スコットランドの首都エジンバラ。
ロンドンから電車で数時間、
車窓から見る風景が変わっていく様子に
ワクワクしながら到着した。
エジンバラはロンドンとは違い
どこか小さな街のような雰囲気が漂う。
エジンバラ城に着くと
その壮大さに圧倒された。
城の上からは広がる街並みと海が一望でき、
まさに「スコットランドの象徴」
といった感じだった。
街の中にある
「ロイヤル・マイル」も独特の魅力がある。
石畳の道に沿って並ぶ
小さなショップやカフェ
そして街角に立つアーティスト。
エジンバラは
歴史と現代が絶妙に交差している場所だ。
どこに行っても
過去と今が融合している感覚がある。
特に印象的だったのは
街の奥にひっそりと佇む
「エジンバラ大学」の周辺だ。
学生たちが自転車を漕いだり
カフェで本を読んだりしていて、
その「落ち着きの中にある活気」が
とても心地よく感じた。
エジンバラの街そのものが
まるで絵画のように美しい場所だった。
英国の田舎 — 「静寂と風の音」
イギリスの田舎へ。
ロンドンやエジンバラの
喧騒から少し離れてバスで約2時間、
湖水地方(Lake District)へ向かった。
道を進むうちに緑豊かな丘陵が広がり
時折現れる小さな村々には
絵本の中の風景のような家々が立ち並ぶ。
湖水地方では
ボートに乗って湖を巡ることにした。
風が肌を撫で
湖の水面はまるで鏡のように穏やかだ。
無音のような静けさの中でふと
こういう時間こそが
人生に必要なのかもしれない。
そんな哲学的なことを考えている間も
ガイドが懸命にボートを漕いでいたのだが
「風の音と水の音」だけが心に残った。
田舎の小道を歩くと時々
羊が草を食む姿を見ることができる。
カメラを持ちその風景を撮ろうとするが
シャッターを押す前に
羊たちは「ピュッ」と走り去ってしまう。
その後ろ姿に自然と笑っている自分がいる。
思い出の最後に
旅を終え帰国の準備をしていると
何だか少し寂しい気持ちが湧いてきた。
ロンドンの賑やかな街並みも
エジンバラの静けさも
湖水地方の広大な景色も
すべてが心に残る。
最初はただ「旅行」に過ぎないと
思っていたけれど
この体験が
心のよりどころになる予感がしていた。
イギリスは確かに「雨の国」だった。
でも、その雨の中でさえ
温かな人々と美しい景色に包まれていた。
それはただの観光地ではなく
一度足を踏み入れると
心の中に静かに根を張るような場所だった。
またいつか
この国に戻るときがあれば
今度はもっとゆっくりと歩いてみたい。
イギリス旅行は
「心の静けさ」「温かさ」
を見つける旅となった。
旅先で出会った風景と人々の中に
自分を少し忘れて
ただその瞬間を楽しむことの大切さを
学んだ気がした。
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