大全集無視の戦闘力考察①~ラディッツ戦~【ドラゴンボール考察】
はじめに
ドラゴンボールでは劇中、「戦闘力」と呼ばれる強さを数値化した指標が登場する。この戦闘力の概念は当時のバトル漫画としては非常に斬新で、今でも沢山の人に議論されるなど作品を彩った重要な一要素である。
戦闘力は劇中、ごく一部しか数値は出てこないが、公式設定資料集「ドラゴンボール大全集」で各キャラクターの数値が場面ごとに細かく明かされている。しかしこのドラゴンボール大全集、かなり設定がガバガバなのだ。
例えば、ナメック星に着いた時点の悟空の戦闘力は9万と設定されているが、それがメディカルマシーンに入った後は一気に300万までアップ。さらにそこから20倍界王拳を使って6000万、超サイヤ人で1億5000万と、とんでもない値に設定されている。
劇中で具体的な戦闘力が言及された最後の値、フリーザ第2形態の100万と比較すると、超サイヤ人悟空は実に150倍もの差があるのである。(これは体重差にすると、超サイヤ人悟空が60キロの成人男性としたら、フリーザ第2形態は子猫くらい、ギニューに至っては大きめのカブトムシくらいの差になる)
さすがにここまでの差は劇中描写からは考えられず、とても熟慮したものとは思えないのだ。これが公式となってしまっていることに、寂しさを覚えているファンも多いのが現状だろう。
そこで本考察では、このドラゴンボール大全集を無かったものとした上で、さらにアニメ版、劇場版、ゲーム作品、超などの続編作品、鳥山先生の談話すら完全無視し(ただし、作中に判断材料が無い場合は参考に用いる)、漫画内の戦闘描写やセリフから読み取れる心理的描写だけを正として、戦闘力値を突き詰めて考えてみたい。
基準
原作漫画では具体的な戦闘力は一部しか描写されておらず、多くは推測するしかないため、推測にあたり2点の基準を定めたい。
全く手も足も出ず瞬殺される場合は1.8倍以上の差があるものとする。
ある程度戦えてはいるが勝ち目が薄いと思われる場合は1.4倍前後の差があるものとする。
こちらは詳細は以前の考察に記載した、ベジータとキュイの戦い、及び悟空とギニューのやりとりによって推測した基準になる。
本稿では原作漫画版の戦闘描写や心理描写に準じつつ、この2つの基準を用いながら各場面での戦闘力を考察していきたい。また、どうにもならない場合は極力根拠を探しながらも、最終的には感覚で決めることはご容赦いただければと思う。
それではまずは戦闘力という概念が初めて登場したラディッツ編から開始していきたい。
ラディッツの戦闘力
記念すべき戦闘力初登場キャラクターは農夫のおじさんである。
戦闘力値は5。一般人の戦闘力が表示されるのはこの場面が最初で最後である。ドラゴンボール世界のスケール感を把握するのに重要な役割を果たしたおじさんだ。
このおじさんについては考察の余地は無いため、本編のボスであるラディッツの戦闘力を考察していきたい。
参考になる値はナッパのセリフになる。
「パワーだけなら匹敵する」という表現からすると、サイバイマンはラディッツに近いパワーを持ちつつ、スピードや体力などの点では劣るのだろう。サイバイマンよりもラディッツのほうが戦闘力値は高いと思われる。
次に、怒った悟飯の戦闘力にラディッツが驚愕するシーンが以下である。
汗だくで2度も吃っており、激しい動揺が伺える。
この直後に悟飯の突進を食らうのだが、その後は満身創痍の悟空の羽交い締めを振りほどけない程に体力が落ちていた。
劇中でラディッツが負った明確なダメージはこの突進だけであり、1撃でこれほどのダメージを受けるのであれば、悟飯の1307よりもラディッツの戦闘力は下なのではないかと思われる。
悟飯の突進は不意打ちではなく、避けたりガードする時間は十分あった。なのに直撃を避けられなかったことを考慮すると、やはり悟飯のほうが力が上と考えたほうが自然だろう。
以上のことから、ラディッツはサイバイマンの1200以上か悟飯の1307以下として、キリのいい数字でラディッツの戦闘力は1250と想定したい。
悟空とピッコロの戦闘力
ラディッツの戦闘力が定まったところで、次は悟空とピッコロの値を考えていきたい。
戦闘前の二人の値はスカウター計測で334と322となっている。
その後重たい道着を脱いで416、408までアップしている。
そしてこの後、悟空はかめはめ波を打つ際に924まで上昇、ピッコロは魔貫光殺砲を打つ際に1330まで上昇した。
後に気の上昇は「気の開放」「気の爆発」という表現がなされ、気功波を打つ際だけに留まらなくなるのだが、この時はまだ気功波のために気を溜めている時しか戦闘力の大幅な上昇はできなかったと思われる。
実際にラディッツとの格闘シーンでは終始圧倒されており、常時924の力が出ていないことは確実だろう。
ただ彼らはこの時点でも未熟とはいえ、戦闘時の気の開放(戦闘力のコントロール)は、多少はできていたのではないか。根拠としては悟空が一人でラディッツと格闘するシーンになる。
圧倒されてはいるものの、数発の攻撃を直撃で食らっても深刻なダメージには至っていない。
悟空の戦闘力が416のままであれば、約3倍の戦闘力のラディッツには全く相手にもならないだろう。多少の舐めプがあるとしてもこれだけ悟空が粘れたのは、ある程度は気を上昇できていたからと考えたほうが自然ではないだろうか。
以上のことから、ここではラディッツの手加減(舐めプ)を考慮して1000程度の力で戦っていたとして、「1.4倍離れていると勝ち目が薄い」基準を参考に、悟空は680程度まで気を上げていたと考えたい。
またピッコロについても、重たい服を脱ぐ前、脱いだ後ともに悟空と大差ないことから考えると、格闘時も悟空と同程度の戦闘力だと思われるため、ここでは道着を脱いだ後の差(-8)をそのまま適用し、ピッコロは672と想定したい。
なお、ラディッツのスカウターは悟飯の710に反応して警戒信号を出している。
もしラディッツが700を基準にアラートが出るように設定していたとすると、700の1.8倍は1260である。今回ラディッツの戦闘力を1250と想定したが、1.8倍圧倒理論に則ると、ラディッツにとって戦闘力700以上の相手は「勝てるが警戒がいる相手」になる。700でのアラートは理にかなった妥当なラインと言えるだろう。
まとめ
なお、ピッコロは魔貫光殺砲時に1330まで気を上昇させているが、この時は片腕を失う重症の状態である(再生はできても体力は減っているはず)。後の劇中描写で、大きなダメージを受けると気も大きく下がることはわかっており、万全なら1330よりもっと上まで高めることもできたかもしれない。
そして悟空も本気のかめはめ波(天下一武道会で披露した超かめはめ波)であれば、魔貫光殺砲とまではいかなくともMAXで1200くらいは出せたかもしれない。
そのように考えるとラディッツは、本来は自分と同格かそれ以上の攻撃力を持つ相手だったのにスカウターがあったせいで舐めプをしてしまい、負けるべくして負けた、という滑稽なキャラクターだったと言えるだろう。むしろ悟空を道連れにできたのはファインプレーだったかもしれない。
しかし一方で、セル対トランクスの描写にも裏付けられるように、いくら攻撃力が高くてもそれだけでは勝てない。
特にラディッツと悟空たちとのスピードの差は歴然であり、もしラディッツが来襲前に下調べをしたり、相手の出方を探りながら慎重に戦っていれば、悟飯というイレギュラーはあったにせよ負けることはまず無かっただろう。
彼はその身をもって準備の重要さと、目に見えるもの(スカウターの値)だけを信じてはいけない、ということをを読者に教えてくれたのである。
余談
ラディッツはゲーム作品だと「ダブルサンデー」「サタデークラッシュ」など、技名に曜日が付いている。原作ではまるでそんな要素は無いのに謎だ・・・。
ラディッツはゲーム作品ではIFストーリーで改心や救済がされることも多いが、超などの公式続編作品では今のところ救済は無しである。
個人的には、ラディッツが悟空の兄というのは、思い込まされていただけの嘘だと思っていたのだが、2014年に鳥山先生が執筆したコメディテイストの前日譚、「銀河パトロールジャコ」にて正式に兄としての幼少期が描写された。意外にも父バーダックは家族愛が強く、母親のギネも愛情深い性格で、戦闘民族サイヤ人の中では異例とも言える温かい家庭で育っているのだが、何故あんな醜悪な性格に・・。(両親を失って歪んだのか、ベジータへの劣等感なのか・・)
次回、サイバイマン戦に続く。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?