壁井ユカコの恋愛小説をおすすめしたい
普段あまり恋愛小説を読まないのだけれど、壁井ユカコさんは十代の私に恋とはなんたるかを教えてくれた大事な作家さん。なんだけれど、あまり話題になることが無く、さらには単行本とかも絶版になったりして悲しいのでおすすめさせてください。
『NOCALL NOLIFE』2006年
「時間を超えて電話が繋がるなんてこと、あると思う?」携帯電話に残された、見知らぬ男の子からの留守メッセージ。奇妙な間違い電話に引き寄せられて、東京湾に臨む埠頭で出会った有海と春川。17歳と19歳、オトナとコドモのあいだで押し潰されて行き場を失った2人の、それはあまりにも刹那的で欠陥だらけのつたない恋―。怖いものなんてなかった。無敵になった気分だった。明日地球に隕石が衝突して世界中の人類が滅んで2人きりになったって、困ることは何もないような気がした
なんだこの「NOMUSICNOLIFE」的なタイトルは、と思ったけれど、主人公二人があやうくて儚くて、月並みだけど胸がぎゅっとなる。壁井さんのこの話は年代もあってセカイ系っぽいんだけど、誰かから庇護を受けないと生きていけない子ども、その周り、みたいなのもきちんと書いてあるのがいい。
『エンドロールまであと、』2007年
旧家に生まれた双子の高校二年生、佐々右布子と左馬之助の関係は最近ちょっとぎくしゃく気味。今までいつも一緒にいたのに左馬之助がどこかよそよそしいのだ。右布子はその原因が何なのかよくわからないまま、生まれて初めて積極的に友達を作ろうとしたり、二人が所属する映画研究会で映画を作ったりと日々を過ごすが―“その想い”を自覚できない姉と、自覚してしまった弟の、禁断の恋の物語は静かに熱く動きはじめる。
兄妹の禁断の恋、なんだけれど、まーーー壁井さんは難しい恋を書くのが上手い。読後感は『NOCALLNOLIFE』と似ている。番外編が巻末についているので本編を読み終わったあと「まだ終わってない・・!」とギリ精神を保てる。
『カスタム・チャイルド』2005年
「あー…そっか、もしかして俺しばらく音信不通だった?」『一周間。さすがに死んだかと思うだろ』そんなにたってたっけ。どうりで六月も終わるはずだ。―三嶋は友人の電話に起こされ、寝ぼけたままバスルームへと向かった。ふと、戸口に人の気配がし振り返ろうとした時、首筋にあてられた刃物の感触に全身が凍りついた。「動かないで。動いたら切れるよ」三嶋の前に突然現れた少女マドカ。三嶋の夏はこうして始まった―。第9回電撃ゲーム小説大賞“大賞”受賞作『キーリ』シリーズの著者、書き下ろし長編。
ライトノベル。設定はSF。「三嶋の夏はこうして始まった―」とか書かれると爽やか青春っぽい感じがするけれどそうじゃない。壁井さんの小説に出てくる男の人みんな三嶋みたいな雰囲気出してくるからこれがハマった人はあと全部ハマると思います。一応続編で2巻も出ているけれど、そちらは私はあまりハマらなかった。
『サマーサイダー』2011年
幼馴染みの倉田ミズ、三浦誉、恵悠は廃校になった中学の最後の卒業生。揺らぐ三角関係の中心には、去年の夏休みに変死体で発見された担任教師をめぐる秘密があった。夏が再び訪れ、廃校舎に隠した罪の記憶が三人を追いつめてゆく。ほの暗い恐怖を漂わせながら、少年少女の切ない関係を瑞々しく描く傑作青春小説。
恋愛物のくくりにいれていいのか悩む問題作。毎年夏になると読みたくなる。市川春子さんの表紙もまた良い。割と最近に出たものなので入手しやすい。
デビュー作の『キーリ』とか『鳥籠荘の今日も眠たい住人たち』とかもすっごく雰囲気がよいのでどれか一つでもハマったら全部おすすめです。kindleにもあるので・・『NOCALLNOLIFE』はおすすめしておいて申し訳ないんですが絶版っぽいので私と一緒にkindleリクエストしてください・・・