絵本探究 2期がスタート!
ミッキー絵本探求ゼミ、新しいメンバー、チームで第2期が始まりました。
講師は東洋大学准教授 竹内美紀先生です。
2期スタートの冒頭にアウトプットについてお話下さいました。
・自分の振り返りを読んでくれる人に向けて書く、アウトプットする。
・講座でどこに注目したか、どこが響いたのか、振り返りをして自分のことば、文で表現する。
第2期、気持ちを新たに振り返りをしていきます!!
絵本をジャンル別に深めていく2期。前回とは違う視点からの絵本探求が楽しみです。
「いい絵本の条件は?」
選書の基準を考える
ジャンル別にアプローチを考えてみよう
先ず「絵本の定義」で基本を振り返る。
絵本の定義
絵本は、文章、絵、トータルデザインからなり、大量生産される商業製品でもあり、社会的、文化的、歴史的な記録であり、そして何よりも子どもにとっての体験である。芸術としての絵本は、絵と言葉の相互依存性、見開きページの同時表示、そしてページをめくることによるドラマによって成り立っている。
(Bader,Barbara. American Picturebooks)
【第1回講座】
「昔話絵本」
昔話と聞いてどんなお話が思い浮かぶだろうか?
ももたろう、さるかに、つるのおんがえし、かさじぞう、はなさかじいさん、うらしまたろう、こぶとりじいさん、いっすんぼうし、おおかみとしちひきのこやぎ、さんびきのこぶた、しらゆきひめ、ジャックと豆の木、シンデレラ、ヘンゼルとグレーテル・・・
頭に思い浮かべながら、タイトルは?
昔話?いろいろある、考えてしまった!
私の子どものころ、家に世界童話全集があり、日本のむかしばなし、グリム童話、アンデルセン童話など分かれていて、1冊の本にいは、いくつかのお話があり読み物として親しんでいたことを思い出す。お話の記憶が曖昧になっていたり、子どもの時には、ある一場面が好きだったりした。
幼児教育を学び絵本を手にする機会が増え、今はこんなに絵本があるんだ!と驚いた記憶もある。幼稚園に勤めてからは絵本の読み聞かせ、絵本から遊び、そして子育て、絵本がとても身近になっていき、今の絵本の活動に至る。
今回グループで紹介した絵本は『ねずみのすもう』だが、この絵本は子どもが“でんかしょでんかしょ”のすもうを取るときの掛け声と小さなねずみが大きなねずみを負かす場面が気に入っていたので子育て中の思い出も含めて選んだ。
現在、朝の時間に読み聞かせで学校に行ったり、赤ちゃんとお母さんに絵本を読む機会が多いが、昔話というと、タイトルは聞いたことがあってもお話は知らない、という声を聞くことがある。
新しい絵本がたくさん出版され、絵本で楽しい時間を共有することが手軽にできそうでありながら、なかなかそうばかりではないと感じている。生活様式の変化もあるのだが、新しいことと古くから受け継がれるもの、両方を大事にしていきたい。絵本においても、様々なジャンル、技法の違う絵本、いろんな作家さんの絵本に出会い、腑に落ちることができたらよいと思う。その中で、「昔話絵本」のジャンルは伝統が引き継がれているところでもあり、絵本を選び方に配慮が必要だと思う。今回のゼミでの学びを選書に大いに活かしていきたいところだ。
今回のゼミでの「昔話絵本」と「昔話」の定義により、昔話絵本とハナシ(語り)の違いをあらためて確認することができた。伝承されてきた昔話を文章化、さらに視覚化した絵本は昔話そのものとは違うことを頭に置き絵本を見ていく。
昔話について定義をまとめ、昔話の要所を振り返る。
藤本朝巳『昔話と昔話絵本の世界』(日本エディタースクール出版部)では、柳田氏の「昔話とは」をさらに解説している。
「昔々あるところに」という類の文句をもって始まる。
「昔々あるところに」・・・発端句
この発端句があることは重要。この導入は、昔話特有の舞台となる不特定の時間、不特定の空間を示す、いつのことだか、どこで起こったことだかわからない、という導入の仕方。
この「昔々あるところに」ということばが、これから話すことは本当にあったことでなく、作り話なのだという一種の標識としても機能している。これは、伝説や神話と大きく違うところで「これから昔話が始まる、これは作り話なのだから気軽に聞いてよい」と感じるような機能を持つ。「昔むかし」という句が、現実から距離を保ち、ある別な世界へ踏み入ることを進めている。
話の句切りごとに必ずトサ、ゲナ、ソウナ、トイウなどの語を付して、それが又聴きであることを示す。
又聞き(トサ、ゲナ、ソウナ、トイウなど)
すべて〈伝聞された〉という意味合いを含む。
伝聞を強調することによって、その話は語り手の特殊な経験ではないことを言っている。
「一定の今は無意識に近い言葉」・・・結末句
最後に、一定の今は無意識に近い言葉をもって、話の終わりを明らかにしたもの。
“どんとはらい” “めでたいめでたし” など形式の句を指す。
聴いて知っていることはこれだけだ、これでおしまい、話はこれだけ、いう意味。
この文芸は口と耳をもって世に流布していた。
伝聞の文芸
『口承文芸史考』柳田國男
昔話は伝承されたもの
文章化された本としての昔話は昔話そのものではない。
まして、活字化された昔話をさらに視覚化した昔話絵本は、昔話そのものとは相当かけ離れたものと理解する必要がある。
リューティの様式論
1) 一次元性
2) 平面性
3) 抽象的様式
4) 孤立性と普遍性
一次元性(リューティの様式論①)
昔話では、あちら側の世界の人がこちら側の世界に入ってきても驚かない。
扇形の扇面で描かれている場面がある。この枠があることは作り手の主張が出ている。
子どもはお話のその世界に生きている。ありえない世界に行ったらその世界を見ている。
お話を1つの枠としてとらえることは、外側からしか見ていないことになる。
ここで、今回私が選んだ絵本2冊の『ねずみのすもう』を比べてみると、描く視点が違う。
全体を見ながら外からお話を聞いている絵本と、お話の中に入って体験している違いがあるのではないかと思った。
平面性(リューティの様式論②)
語り口が紙細工を切ったと同じように、主人公の性質や感情は話のすじの中で表現される。
[昔話の残酷性]
昔話は残酷か、残酷か話は子どもには聞かせてはいけないのか
昔話の本質:昔話では悪は成敗される、悪いことをしたら罰せられる。
事実は伝えるが、絵ではそこまで表現しない。言葉で事実をシンプルに語り絵でも事実を伝えるが描写は抑える。
(着物の中身を抜いている=おばあさんがいない)中身を抜いて語る平面性(折り紙細工)
(うまの足 切り取り 平面性)
『さんびきのこぶた』
こぶたを食べてしまった場面
中心的登場者が食べられるなんてと非難されているが、ここで注してほしいことはこの昔話は
残酷な事実を描いているが決して残虐には描いていない。この語り口は昔話の純化作用と称する語り方で、昔話は現実の厳しい有様をありのままさらりと語る。(昔話と昔話絵本の世界』藤本朝巳)
世の中には理不尽のことがある、昔話では理不尽の現実を表している。
それをおどろおどろしく語ることはいけない。昔話は物事をリアルでは語らない。
昔話の途中で怖いと思う場面があっても主人公と一緒に乗り切り幸せにたどり着く、ああよかったと思う幸せを獲得することができる。
抽象的様式(リュティの様式論③)
昔話は、絵画でいえば幾何学的な線を引いたり極端な色を与えて平面を強調する。
「大きい」「小さい」「強い」「美しい」など形容詞が統一的で細かく描写しない。
色ははっきりとして原色。正確な繰り返しがある。
「よいおじいさんと悪いおじいさん」極端である。
孤立性と普遍性(リュティの様式論④)
昔話の主人公の内面性は育たない。
1つの登場人物は成長なし。
話のすじを形成する各エピソードがそれぞれカプセルに入って孤立している。
リュティの考えるところによるところでは、昔話の登場人物はそもそも、それぞれ孤立した図形である、という。孤立の意味は、登場人物の祖先がどんな人であったか、など関連のことを語られていない。
作り手の意図が絵本に表現れている。
今まで読んでいた絵本も今回学んだことを思いながら開きよく見たいと思う。
・赤羽末吉さんは、肝心なところは赤と緑で描く。
・小澤俊夫さんは、専門家として話の本質を大事にしている。
・松居直さんは絵本をつくることによって子どもたちに何を伝えたいかを大事にしている。
昔話の聖数、昔話に出てくることの多い数字
「3」
3拍子のリズム
大きな幸せを得る前に、一度悲惨な状態に陥ってから上に飛び上がるダイナミックな展開が昔話では好まれる。それは、ちょうど人間が高く飛び上がるために、先ずかがみこみ勢いをつけてから飛び上がることが自然の動きであることと同じ。(小澤俊夫/編 昔話入門
昔話に末っ子が多いのはなぜか
小澤俊夫さんがご著書のコラムで末っ子について語っておられました。
昔話は、いつでも弱いものの味方です。だから三人兄弟(姉妹)のなかで一番小さくて、まだ力の足りない弱い立場である末っ子が主人公となって活躍するのでしょう。
それでは、上のふたりに対して不公平かというと、そうではないと思います。
スイスの昔話研究者マックス・リュティ先生は「人はみんな一度は末っ子だった」と。
長男も次男もみんな一度は末っ子だった経験があるはず。もっと大きく考えれば、子どもという存在そのものが、社会のなかの末っ子と考えることもできる。
弱い立場の者が成功をする、その喜びを、語っているのは、昔話のやさしさといえるでしょう。
『こんにちは、昔話です』小澤俊夫/著
小澤昔ばなし研究所
世間をぐるりと見まわしてみた時に、多様性を認め合うことにつながると思いました。
第2期が始まって
チーム4は6人、絵本1冊を持ち寄り自己紹介では、今期初めて参加の3名はお気に入りの絵本を、1期から引き続き参加の3名は昔話絵本を紹介しました。
絵本をツールとしての自己紹介で、それぞれの思い入れやエピソードがある絵本を通して知り合う一歩になりました。
『のはらひめ』なかがわちひろ/作 徳間書店
『は にげる!』東京ハイジ
『おへそのあな』長谷川義史/作 BL出版
『三びきのやぎのがらがらどん』ノルウェーの昔話 マ―シャ・ブラウン/絵 せたていじ/訳
『スーホの白い馬』モンゴル民話 大塚雄二/再話 赤羽末吉/画
『ねずみのすもう』樋口淳/文 二俣栄五郎/絵 ほるぷ出版
『ねずみのすもう』神沢利子/文 赤羽末吉/絵 偕成社
受講動機と目標
第1期に引き続きミッキー絵本探求ゼミ第2期の受講を決めました。
今まで子どもたちと読んできた絵本も1期で絵本の絵とことばの関係や技法など学ぶことで新たな魅力を発見できました。
とても興味深く、視点を変えることで感じる深さ、チームで皆さんと一緒に学び合うことで、自分だけでは気づけなかったことがわかり刺激になりました。とても楽しくまだ続けたい気持ちが大きく2期を迎えました。ジャンル別での絵本探求、とても楽しみです。
絵本をよく読みます、というお母さんもお子さんと一緒にどんな絵本を読もうか?いつどんな時にと迷われていたり、大人の方から読んでもらうと絵本っていいものですねと感想をいただきます。
小学生から中学、高校、大人へ、どの年代にもその時その時に絵本から心に留まることばやメッセージをもらえます。絵本を声に出して読む場で心地よく、いいなと思ってもらうことは一番ですが、ページを開いて読んでほしい絵本、どんな良さがあるのかをことばで伝える、今回はジャンル別ということで時と場、対象者に考慮して絵本の選書の幅を広げられるようにしたいです。
聞いている方に伝わる絵本の話ができること!
1期に引き続きの目標です。
今回はチームFAとしても自分なりに成長できるように頑張ります!!