「銘柄」

「あっ」
 コンビニのレジの前、会計中の私は声を詰まらせた。正確にはタバコの銘柄を言おうとして、思いとどまったのだ。昨日別れた、元カレが吸っていたタバコの銘柄。それを言おうとしたのだ。あまりにも日常に浸透していたので気が付かなかった。

「五番で」
 私は別の銘柄を頼んだ。買い物を終えて店の外の喫煙スペースで吸った。勢いで頼んだ初めての銘柄。味は慣れないがこれから慣れていくだろう。思えば喫煙も彼氏の影響で始めたものだ。あの野郎。なんてものを残していきやがった。元カレへの怒りを煙草にこめて、煙と共に吐き出した。

 一本を吸い終えた後、心が軽くなった私は家に向かって歩き出した。

 

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