「血の鎖」
曇天の空の下、僕は占領した敵国に足を運んでいた。敵国は我が国の戦士達により、多くの建物が壊れていた。家も教会もビルも全てが見るも無惨な姿になっていたのだ。
僕は自国に怒りを覚えている。民間人を危険に晒すなどあってはならない。戦争とは軍人同士の衝突でなければならないと思っている。そうあるべきだ。なのにも関わらず、我が国のトップは民間人が住む地域に攻撃を仕掛けるように命じたのだ。敵国とはいえ、無力な民だ。
だからこの敵国の壊滅状況を本国に知らせた後、僕は軍をやめるつもりだ。こんなトップの玩具に成り下がった軍にはいたくない。すると突然、ボロボロになっていた近くの家が倒壊した。崩れた家から一枚の紙のようなものが足元に舞ってきた。写真だった。拾い上げて確認した時、僕は驚愕した。そこには三人の人物が写っていた。小さい女の子。おそらくその母親。そして、父親。僕はこの男に見覚えがあった。
戦場で最初で最後に撃ち殺した男だったのだ。目も鼻も口も夢に見るくらい全て焼き付いているから覚えているのだ。僕は撃った弾丸を心臓の受けた時の顔もしばらく痙攣してその目から光が消えるのも記憶に残っている
人を殺した人間がそこから逃れようなんて都合の良い話なのかもしれない。僕はその場で蹲って、声を上げて泣いた。