「無機質な手」
静かな病室の中、ベッドの上で呆然と生まれ変わった右腕を見ていた。鉄で作られた新しい腕。
数日前、戦争で腕を無くした事で俺は義手をつけることになった。
最新技術のおかげで日常生活が行えるようになるのは感謝している。しかし、それでも失ったものはある。
「お父さん!」
病室の扉を開けて、娘が入ってきた。
「おお! きてくれたのか」
「あなた。腕は大丈夫?」
「ああ、なんとか」
妻と娘が見舞いに来てくれた。
「お父さんの手ピカピカだね」
娘が義手を興味深そうに触る。かつて感じていた小さな温もりはそこにはない。日常生活に不便はないが、大事なものがなくなった気がした。
俺は温もりに縋るように残った左手で娘の頭を撫でた。