「足跡を刻む」

 街のカフェの窓際から騒がしい外の景色を眺めていた。町中で多くの人達が自国の国旗を抱えて、行進している。その顔は険しく、怒りを感じられた。彼らの足元には足跡だらけになった隣国の旗がいくつも散らばっている。

 無理もない。ここ最近、隣国から押し寄せた難民のせいで治安が急激に悪化したのだ。国内の経済を整える目的で難民を受け入れたがそのせいで、治安が悪化して、犯罪も増えてしまった。それにより国民の怒りが爆発して今、このような状態になっている。

 愛国者達の行進が視界から離れた瞬間、鼓膜を激震させるような爆発音が聞こえた。すると行進していた人達が時を巻き戻るように戻ってきた。遠くの方から聞きなれない言語が聞こえる。おそらく今、難民と愛国者達が戦っているのだ。

 店員が危機を察して、カフェの入り口や窓を守るようにシャッターを下ろした。先程まで安全圏だったこの場所が今は血生臭い戦場の一部と化したのだ。電気を落として暗くなった店内。暗闇の向こうからは絶えず、怒号と悲鳴が飛び交っていた。

 一時間後、辺りが静まり返ったのを確認して、シャッターが開放された。窓の外はまるでこの世の終わりのように荒廃していた。道路に染みついた血痕。焼かれた自国の国旗。破壊された建物の入り口のドア。文化が違うとここまで人は分かり合えないのか。奴らには感謝はないのか。

 私は外に出て、この変わり果てた故郷の惨状に思わずため息が出た。足元には足跡のだらけの隣国の旗があった。私はそれを強く踏みつけた。

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