「不幸を呼ぶガス」
人でごった返す駅のホーム。僕は電車を待っていた。
「はあ」
近くでため息が聞こえた。町中の至る所でため息が聞こえる。ため息立ち込める大都会。正直息が詰まりそうだ。人の内側に留め込まれていた澱んだ空気が街を覆い、不幸の雨を降らせる。
そんなことを考える。関連性はないけど、現に幸薄そうな人間は皆、ため息をついている。現に僕もため息をついている。ダメだ。幸せが逃げる。しかし、ガスは喉元まで溜まっていた。ああ、近いうちに雨が降るな。
すると電車が近づいてきた。やっと帰れる。そう思った時、近くで大きな音がした。それと同時に雨が降った。鉄の匂いがした。