「降ってきた」
会議中、小説のアイデアが降ってきた。小説家志望の僕としてはこの上ない喜びだ。しかし、今はあまりにもタイミングが悪い。神様はどうしてこんな酷い事をするのだろうか。とりあえず時間が過ぎるのを待った。こんな時に限って、秒針が遅く感じる。というか会議自体も長引いている。メモを取ろうにも目の前にいるのは会長と前会長だ。
とてもそんな真似はできない。もしバレようものならお説教の嵐だ。とりあえず待て、耐え忍ぶのだ。幸い僕が発表する番は終わった。終われ。終われ。
「ではこれにて会議を終えます」
「お疲れ様でした!」
僕と上司は会長と前会長に頭を下げた。二人が対記したタイミングを見計らって、スマホを取り出した。既にアイデアが薄れていた。しかし、今、スマホでメモを取る事でその残滓を回収出来れば、いくらでも挽回できる。
書き込もうとしたその時、上司に後ろから声をかけられた。
「さっきの会議の資料よかったよ。これからも頑張って」
「はい。ありがとうございます!」
感謝を受け取って、頭を下げた。
僕、何か大事な事を考えていた気がする。