「王の最後」
数多の生命が走る大草原。俺は独りで進んでいた。燻んだ立て髪と戦で傷だらけになった顔は俺の生涯の記録だ。
生まれてこの方,争い続きだ。ある時は草原で,ある時は断崖絶壁で、ある時は水辺で戦ってきた。
おかげで俺に歯向かう者はいなくなった。最も強い存在になった。
でももう終わる。体が老いているのが分かるのだ。眠くなった俺は地面に体を付けた。
遠くの方で幼い子供が母親と戯れている。あの関係性は親がいなかった俺にとってどうしても理解出来なかったものであり、どうしようもなく何故か、目を引かれてしまうものだ。
来世があるなら,ああ言う生き方をしてみるのも悪くないかもしれない。俺は脱力感に身を任せて目を瞑った。