「野良犬」
「うちの旦那。ATMだから」
会社から帰って、リビングの扉を開けようとした時、聞こえた。最愛の妻の聞いたことない声と言葉。
いや、どこか薄々感づいていた。最近、化粧する機会が増えたり、出費が増えたり、外出も増えた。そして、徐々に二人の関係が冷めきっていたこと。
僕はそのまま、リビングの扉を開けた。妻は少し驚いていたが僕は無言で近づいて、殴った。そこから先は覚えていない。
気がつくと辺りは壊れていた。倒れた食器棚。穴だらけの壁そして、血だらけで床に倒れている妻。
後悔はない。疑問という鎖。結婚という束縛。それらを断ち切った。でもこれがバレたらさらに丈夫な鎖で繋がれてしまう。
僕はゴミの処理を始めた。