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御相伴衆~Escorts 第一章 第九十七話  暗躍の行方2「高官接待①」

🌟👆第八十八話以来、「暗躍の行方」という括りで、9話ぶりにメインの話に戻ってきました。時系列的に、間に特別編「隣国の王女編」が入りました。お話は、その後の話として、続いてまいります。第八十八話から、読み直して頂くと、お話が続くと思います。ややこしいですが、宜しくお願いします。


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 数馬は、その前夜、高官接待の打ち合わせということで、柚葉の部屋に呼ばれていた。慈朗シロウの処には、第二皇妃が御渡りの日で、慈朗は、このことを知らなかった。

「これさ、数馬には、事前に見せておくね」
「わっ、何?・・・柚葉、お前、やっぱり、両刀?」
「ばーか。これは、の高官たちに、事前に送られるカタログ」

 そこには、例の美姫びきたちの写真が乗っている。結構な厚さだ。1ページに女の子のバストショットと、立ち姿が、お見合い写真よろしく並んでいる。メンバーが入れ替わる度に、新しいものが発行されているらしい。最後のページに、写真を差し込むホルダーがついていた。

「え?」
「ああ、最近、女の子並みの扱いなんだねえ。我ながら、恥ずかしいけど」
「これえ、いつ、撮られたんだよ?ヤバいやつだ・・・」
「クスクス、笑えるね、桐藤キリト、かっこいいじゃん」
「あああ、一番、こういうの、大嫌いそうな、桐藤まで・・・」

 つまり、これは、俺たち、御相伴衆4名のオリジナルのページらしい。

「このページはね、一番、可愛い子ちゃん♡」
「あああ、慈朗ね。可愛いのは、確かだな」
「写真栄えするよねえ・・・♡」

 数馬は、そのアルバムを、パタンと音を立てて、閉じた。

「馬鹿すぎ・・・っていうか、こんなの、出回ってるの?・・・はあ、なんてこったあ」
「つまりは、そういうことだよ」
「やだなあ、もう、当たり前のように・・・だから、慈朗が、決まるまで、内容教えない、って言ったんだ」
「まあね、接待っていえば、相場、こんなもんだろうから、ご機嫌取って、結果を出した子は、ご褒美が貰えるよね。当然のことながら」

 柚葉は、訳知り顔で、続けた。

「でもね、まあ、今回は多分、数馬、このパターンは回避できるかも」
「え・・・なんで?」
「大事な任務を、上から、指示されてないか?」
「え?」
「まあ、いい。すべきことを指示されているのならば、それを果たせば、無罪放免だ」
「何の事?」

 柚葉、知っているのか?

 本殿の人間には、一切、知られてはいけないことだから、ここはこれで行くしかないな。確証が取れたら、話せる相手なのかもしれないけど・・・。

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 驚いた。急遽、あの場で踊らされるとは。

 勘は鈍っていなかったな。
 鳴り物担当の人が、上手く合わせてくれたし、あの衣装、全部、遺されていたことが、今更の驚きだ。親爺や兄者の衣装が、楽屋に設えてあったなんて。どうなってるんだろう?

 ・・・でも、形見が、これで全部返されたので、ありがたい。演目と衣装を合わせることができるし・・・。

 無事、紫統シトウ大佐に、例のものを渡すことができた。皇妃からの献上品である、装飾品だった。お返しに、維羅イラの求めていたものを頂いた。

 これで、いわゆる、任務終了ってことだな。

 話はどうやら、できていたらしい。宴会場で芸を披露し、踊った後、紫統様は、俺と柚葉を、私室に呼び出した。そこで、品物の交換をした処で、俺は、お邪魔虫扱いで、部屋へ帰ることができた。見ちゃったけどね。紫統様と柚葉のこと。少し、誘われたけど、とんでもないんで、部屋に下がらせてもらった。これで、俺の仕事は終了だ。

 俺の仕事である所の、ものの取り交わしを終えると、取引終了にて、紫統様は、すぐ、数枚の契約書にサインをした。その頃には、柚葉は、紫統様の隣に座り、肩を抱かれていた。風情が、慈朗のように、俯いた表情で、普段と違って、不思議な感じがした。

 なんだろう。柚葉は、いつもの柚葉でなくなってた。・・・女の子みたいに。表情が違う。うっとりと紫統様に寄りかかって・・・、

「いいのだよ。見ていても、共に侍っても、部屋に帰っても、君の自由だ」

 そりゃ、帰りますって・・・すかさず、書類を封筒に収めた。頭を下げて、部屋を出た。

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 それから、数時間の後、柚葉が、部屋に帰ってきた。
 
 俺は、当然、仕事が終わったので、風呂に入り、すぐ、ベッドに入って、眠りかけていた。

「ただいま、数馬・・・何?灯りついてるから、起きてると思ったら、もう、寝てんだ」
「ん・・・あ?・・・ああ、柚葉。なんだ、朝まで、あっちかな、と思ったんだけど」
「起こして、ごめん。まあね、今回は、こんな感じかな・・・」
「そうなんだ」
「うん」
「じゃあ、柚葉も、仕事終わりだ。お疲れ様」
「まあ、最後のは、もう、違うんだけどさ」
「え?・・・あれも、仕事の内じゃないの?」
「と言えば、そうだし、そうじゃないって言えば、そうじゃないし」
「なんか、お仕事っぽくなかったってこと?」

 まあ、そうなんだろうな。あの感じだと、かなり、マジだったみたいだしね。柚葉にしてみれば、故郷の人で、自分を育ててくれた人でもあるのだそうだし・・・それ以外は、理解し難いけど。

 確かに、柚葉の立場は、俺と同じなんだよね。俺より扱いがよくて、モテモテなポジションで、一見、恵まれているように見えるけどさ。それだけに、期待に応えなゃならないのに、辛そうな感じを、おくびにも出さないのは、すごいとは思っているんだ。

 だから、あの紫統様に甘えたっていいと思う。慈朗が、第二皇妃様に甘えるのに、似てるような気がする。

「それにしても、今日の舞と、的当ての芸は、すごかったね」
「ああ、そう、本当にありがとう。あの時、柚葉が、鳴りものの係の人に、通訳してもらったから、5分で打ち合わせできたよ。あの人もベテランで、言うこと、すぐ解ってくれたから、思った通り、やらせて貰えたし」
「いやあ、初めて、数馬が来た日、桐藤と一騎打ちしたのを思い出したよ。見事だったよ。あれは、相当の修練のない者にはできないものだ。数馬に、プロを見たよ」
「やれたこと、そのこと自体、すごい、嬉しかった。足も治っていた確証が持てたし、色々と腕が落ちてなかったのも、嬉しかった」
「舞台端の大柱を蹴っての、宙返りが、カッコよかった。痺れたね。的当ても、どんどん、難しくなって、スピードあげて、矢を放ってて。東国の武士を思わせた」

 数馬は、今日一番の笑顔を見せた。
 ここまでが、素国の高官相手の接待だった為、緊張の連続ではあったが、ひとまず、役目は果たせたと、安堵していたからだろう。

「まあ、古い芸のスタンダードなんだよ。後ろで、親爺や兄者が鳴りものやっていた感じがしてさ。衣装も、取っておいてくれたんだね。兄者の着ていたのが、もう、俺、丁度良くなっててさ・・・」
「数馬?」

🔑

 珍しい。数馬、泣いてるのか・・・。人前で、そんな感じ、全くしない奴だから・・・そうか、維羅から聞いていたが、流れ着いた時、一緒にいた大人は、処刑されたんだったな・・・。

らせて貰って、ありがとう。柚葉。勘を取り戻せた。きっと、親爺や兄者も、喜んでくれてると思う」
「そうか。良かったな。お礼は、俺より、紫統様に言って」
「うん、明日の朝、そうさせて貰うよ」

 涙を腕で拭って、数馬は笑った。

 この仕事のことを思うと、色々とあるし、思う所もあるけど・・・
 まあ、これはこれで、数馬にとっては、良かったのだろうから・・・


🔑🏹


「ねえ、数馬って、ダブルに寝る時、右なんだね?」
「あ?」
「だって、今、右に寄ってるじゃん」
「あああ、多分、慈朗の所為かも。怒んないでね。別に、ベッドが一緒だったから、意味はないんだけど、慈朗は、人の左にいるのが、好きなんだよね」
「知ってる♡」
「そう、だから、癖だね」
「そういうことね。ありがとう、俺の分、開けておいてくれたんでしょ?」
「あああ、朝まで、紫統様のとこだと思ったから、そんな心算はなかったんだけどさ」

 そういうと、柚葉は、事も無げに、脱いだまま、椅子に掛けておいた、俺のスーツとワイシャツとネクタイを、ハンガーに掛けた。カフスやタイピンを纏めて、靴下まで畳んでくれた。・・・というか、恐らく、自分の習慣なんだろう。自分が脱いだものと混ざるのが、嫌だったに違いない。

「ああ、ごめん、ありがとう」

 案の定、休む為に、柚葉は、自分の脱いだ服を、同様に処理し始めた。


~暗躍の行方3につづく


御相伴衆~Escorts 第一章 第九十七話 暗躍の行方2「高官接待①」

 
今回も、お読み頂きまして、ありがとうございます。
   前回までの「隣国の王女編」はサブストーリーでした。
 「暗躍の行方」は、第八十八話以来で、約十話ぶりにメインの話に戻ってきました。

 今回、第九十七話は、打合せから、突然、高官接待の当日に飛んでいます。

 数馬は、奥殿の更に奥にある、貴賓館という施設の中にある、小さなホールで、大道芸人時代にやっていた、舞を披露したというお話でした。

 第八十八話と今回の扉絵は、そんな、舞のイメージです。

 数馬は、ここで知るのですね。大道芸人の大人たちの持ち物が残されていたことを。突然、踊れと言われて、準備されていたのは、その時の衣装と小道具一式でした。

 もしよかったら、この件に戻って頂いてもと思います。
 数馬が、皇宮に連れてこられた後、大人たちはどうなったのか。
 ちょっと、暗い話ですが、背景には、このようなことがありました。

 数馬は、このことで、芸に対する勘を取り戻します。

 さて、高官接待という任務でしたが、今回、数馬は、初めての務めでした。前回の慈朗のような目には遭わずに済んでいますが・・・。

 次回をお楽しみになさってください。

 🌟おまけ メンバーシップ名について

 色々と考えて、このメンバーシップ名を「高官接待アルバムプラン」にしましたが・・・この件を読むと、ちょっと、印象は良くないかもしれませんね。この「アルバム」というアイテムは、今後、また、違う場で出てきます。

 でも、ある意味、『御相伴衆』のメンバーたちが皆様をお迎えしている、ということになるかなと思って、少し、皮肉っぽいニュアンスもありつつ、このようにさせて頂きました。

 皆様は、素敵なメンバーの皆様と思って、いつも感謝しております🍀✨
 ご理解いただけましたら、幸いです😊✨

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