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御相伴衆~Escorts 第三章 Ending 第146話 一からの国造り ~ 耀・辛編 エンディング
「長い間、繰り返される内戦の結果、国内の混乱が相次ぎ、無政府状態の続いていた、大陸西臨海部の小国、スメラギ皇国ですが、この度、ランサム王国、素国、東国の各政府の協力により、皇帝の復権並びに、新政府の樹立と運びとなりました」
「いい写真、撮れましたか?」
「うん、今日は、場所探しでね。まだ、試し撮りしてるとこです。ああ、おじいさん、ラジオ、聴かせて貰って、ありがとうね」
「ああ、なんと、いっとったかな?」
「聴こえないの?」
「ああ、まあ、何か、聞こえとるといいんじゃ、中身は解らんでも」
「スメラギって、国、知ってますか?」
「あー、なんか、石油のとれる国だ」
「そうです。皆、それは、知ってるんだな。僕の故郷なんですよ。そこに新しい皇帝が立ったという話ですよ」
「ほおかぁ・・・」
「・・・まあ、遠い国の話かもしれませんね」
「新しく統治につかれた、第7代皇帝アカル帝は、若干、29歳で、驚くべきは、そのお姿です。オッドアイと言われる、左右の目の色が違うという特徴をお持ちでおられます。右が皇室の血である、金の瞳と言われるものですが、左目が、東国に見られる、漆黒の瞳なんですね」
「これが、ミステリアスと、ちょっと、世の女性の目を惹いているようなんですけど」
「そんな気楽な捉え方では、実は済まなくて、この国の歴史から見て、つい、4、5年前にはあり得ない概念でした。スメラギは、謎の多い国ですよね。ランサムと素国以外とは、国交を断絶していましたからね。その内情を、ご存知ない方は、多いと思います」
「東国蔑視が続いていた国ですからね。しかしながら、今となっては、先祖が同根であるという、歴史的な研究もされています」
「この度、この新皇帝が立たれたのにも、その辺りの改革といいますか、その考え方を一新するという意味合いでの、新統治体制を敷いたということです。ここまでくるのに、3年間、皇子のお立場で、ご努力されてきたということです」
「また、噂では、東国から、お妃候補が出ているということも、言われてますが」
「なんというか、こちら側、東国政府としましては、ずっと、国交を求めてきていた方ですよね。一方的に、過去の歴史に囚われ、国交を断絶していたのは、旧スメラギの側だったので。新国家樹立への協力をきっかけに、この3年前に国交が始まってから、アカル皇子は、隠密で、何度も、東国に訪れていたそうです。その時に、ロマンスが生まれたんでしょうかね・・・」
「国を超えての、しかも、かつての遺恨のある国から、お妃を迎えるというのは、これはまた、話題になりますね。ある意味、見方によっては、前途多難かもしれませんが。旧体制側から見たら、正反対の動きですからね。まさに、タブーを推し進めるようなものですからね」
「何か、映画になりそうじゃないですか。今後の動きに注目したいものです。では、次の・・・」
「あ、おじいさん、また、明日、来るからね、ありがとうね」
「おー、そうか、気をつけてな」
「はい」
カメラマンの慈朗は、親友がついに、その願いを達成したのだと、東国の地方に、撮影旅行に来ていた時に知った。
「戻ったら、お祝いだな」
「辛、いるか?」
「陛下、ここにおります。東国行きの準備はできております。皇輝号はいつでも飛べます」
「辛には、悪いことをしたな。兼務では難しいと思い、俺のお抱えになってもらって」
「軍と皇宮は切り離して、お互いに、牽制しながらの体制が、良いでしょうからね」
「もう少ししたら、軍幹部として、戻って貰うので、今、しばらく、彼女をこちらにお迎えするまでは・・・」
「解りました。私の立場は、臨時ですが、喜んで、引き受けておりますから。貴方のお抱えパイロットとして勤められること程、光栄な事は、ございません」
皇帝の執務室を、新たに設えた。
耀は、そこで、新しく誂えたマントを羽織りながら、辛と話している。
「ありがとう。本当に、ここまで、よく協力してくれた。東国義勇軍との渡りをつけてくれたのもお前だ。本当に助けられた。―――まだ、この国は、始まったばかりだ。父や母の無念を晴らし、姉と妹の為にも、良い国にしたい。階級を撤廃し、皆が、それぞれ、自分の職種で、充分な生活をできる税制を整えた。その為に、ランサムや東国には、特に、協力して頂いたのだ。東国の国王陛下並びに、外務省の方々、ランサムのアルゴス国王陛下や、ランサム政府の皆様には、深い感謝を示したい。・・・そして、彼女には、この三年間、尽力を頂き、・・・申し訳ないが、この後も、ずっと、こちらに居て頂くことになる・・・」
「日女美様も、お歓びです。スメラギのことに、学生時代から、ご興味を持たれ、外務省にお入りになり、ご担当になられて、ついには・・・」
「よく、この北大陸の西南の端の、こんな小さな国の為に・・・、あの情熱は、どこから来るのか?何をどうしたらいいのか、解らなかった三年前、一本の電話から始めて、ずっと、ついてきてくれて、もういいと、音を上げることもなく、我が国の為に尽くしてくれた。既に、彼女は、どの国内の政治家よりも、スメラギの事を考えてくれており、今後も尽くしてくれるに違いない」
「きっと、スメラギと東国は同根、それを、元に戻していくようなことになるのではと思いますよ」
「・・・楽しみにしている。皇宮は、開かれたものにしようと考えている。国の最下層と言われた町には、港を作り、空港を作り、外交の受け皿にする。人々は仕事を選んでもらい、もう、スラムは存在させない。階層の居留区分も撤廃したので、上層に上がる為のインフラを作る」
「慈朗が悦びます。スラムはなくなり、国民全ての子どもたちが、教育を受けられるようにと、今、彼は考えています」
「できる事を、できる形で、少しずつ、進めていこう。後、北の古宮の墓所は、全て、祖先の霊廟に移す事にする。これで、過去の第二皇妃様、そのお嬢様や、お付の者たちを、こちらに正式に入って頂くことにする。スメラギの血の流出の禁止という、古い考え方も無くす。私の両親や、他の者たちの切望していたことだ。民間人同志の国際結婚も認めることにする」
「ありがとうございます。これで、姉も晴れて、ランサム王室の傍で、一の御付のクライスト家の人間になることができます」
「第一号だな」
「陛下と日女美様が、第一号です」
「そうだ、その前に、皇帝として、妹の女美架姫の、アーギュ王太子との縁組を認めるという事もある」
「事実上、王太子に、王子がいらっしゃる状態ですからね。クォーレ王子も、もう12歳になられますね」
「一番の禍根とされていた、素国であるが、先頃から、紫颯王からの正式な国交と、以前のような形ではなく、対等な、親善を持った結びつきを、ご提案頂いている」
「彼は、スメラギとは、縁が深い国王ですね。彼の代になり、素国も、様々な改革を行い、国民の暮しに根差した、国際的にも、開かれた国になりました。・・・まだ、ご結婚をされていないのが、不思議なくらいですが・・・」
「それは、・・・なんというか・・・その、慈朗が、理由を知っているらしい」
「ああ、・・・そうでしたね」
スメラギの復興を鑑み、各国は財政支援を行い、その後、皇太子であった耀を皇帝とし、新スメラギ皇国は立国された。『御相伴衆』の最後の一人であった慈朗は、教育の大切さを鑑み、その分野に助力する。写真家、芸術家としても、大成した。今では、公私共に、素国へ定期的に訪問している。第15代国王紫颯とは、かねてからの、昵懇の仲である。
また、軍族制を廃止し、志願者での国防中心の軍を形成したのは、空軍中佐の英辛であった。東国義勇軍の窓口であった、辻翔弥と尽力し、平和協定に動き、東国との国交は再会された。
ランサム王国は、第五代国王アーギュ・アルゴスの復権とともに、女美架王妃が、アーギュ・クオーレ王太子ともに、正式に籍を置くことになった。離れてから、10年以上経って、やっと、正式な婚姻の形を見ることになった。余談であるが、これは、二人にとっての、当初の間柄を『保留』とした、約束の倍の時間が、かかったのである。
スメラギの第二皇女であった美加璃も、ランサムに居を置く形をとった。柚葉との事を忘れる為もあり、本人の希望からだった、スポーツ振興財団を設立し、その精力的なエネルギーで、世界中を飛び回っている。
以後、スメラギは、身分制度を撤廃し、人々は平等に、それぞれ、仕事につき、自由に生活することができるようになった。虹彩異色の若き皇帝は、東国の一般から、いよいよ、皇后を迎える。
金の瞳と黒の瞳は、両国の平和と協調の象徴となり、元々が同根の先祖を持つ民族である事を、国際社会が、認めることになった。四大大国には、平和協定が結ばれ、理想的な国際社会の実現に、一歩、踏み出したのである。
耀は、新皇帝に就いた。第七代耀帝の誕生である。
新国の立国に大きく寄与した東国は、同根の民族であることを認め、国交を樹立した。代表である、英辛と、辻翔弥により、双方の軍部も協定を結んだ。
耀は、これまで、何度も東国に脚を運び、国造りの協力を要請し、先進国である、東国に学び、教えを請うた。他ならぬ、その際のコーディネーターを引き受けていたのは、外務省の卯月日女美だった。
三年に渡る、新国家樹立に向けての動きの中、耀は、日女美に懇願する。
「スメラギに来て、共に国を支え、盛り立ててほしい」
耀29歳の時、新スメラギ皇国は立国し、同時に、東国民間から、皇后を迎えることとなった。
一からの国造り
~ 耀・辛編 エンディング 完
御相伴衆~Escorts 第三章 Ending
第146話 一からの国造り ~ 耀・辛編 エンディング
お読み頂きまして、ありがとうございます。
正直、説明台詞が多かったのですが、この話の登場人物たちは、嬉しいと、饒舌に沢山喋る傾向があります。しかも、恐らく、それは少し早口ですね。
このように各国の王子たちは、若いながらも王となり、ついに耀は、お妃を迎える段となりました。
この復興物語は、実は、イントロが書いてあります。
父の渡した名刺から、1本の電話をかける。
この「卯月日女美」は、伽世界では、マルチ登場のパラレル女性キャラクターです。ある意味、最強のカードになるのですが・・・。
他のお話にも彼女は、全く、別の立場で登場します。
投稿済みの他のお話の中に、登場しています。
お時間のある方は、探してみてください。
次回は「帰還」ですね。誰のエンディングとなりましょうか?
お楽しみになさってください。
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